【日本シリーズ2024】DeNAにあって、ソフトバンクになかったもの 試合前のベンチで見た対照的すぎる光景
第4戦のアンソニー・ケイ、第5戦のアンドレ・ジャクソンの速球には歯が立たなかった。この福岡での3試合、ソフトバンク打線は比較的高めに目付けをしていたように思われる。ただ、バットを出すものの、前に弾き返せなかったのだ。それに対応しようとすると、今度は緩急に翻弄された。完全な悪循環に陥ったのだった。 【静かだったソフトバンクベンチ】 また、追い詰められていくなかで気になったことがあった。 日本シリーズ中のみずほPayPayドームでは、試合直後の小久保裕紀監督の取材が1塁側ダグアウトのミラールーム(素振り部屋)で行なわれた。先日のコラムで書いたようにゲームセットからたった23秒後に監督取材が始まるほどの近さだ。 もちろん、試合中は代打に備える選手たちがいるので我々メディアがその場所で待機するわけではなかったが、監督がすぐにやってくるため、日本シリーズ期間は9回裏2アウトになったあたりで球団広報に案内される形で特別にミラールームのすぐそばにいることが許された。 筆者は以前、ソフトバンク球団のオフィシャルメディアに従事したことがあり、当時はダグアウトに近い場所で試合中を過ごすことがしばしばあった。試合を生で観ることはできないが、スタンドの歓声よりも試合を戦う選手たちの活気ある声が直接耳に届くようなところだった。 そんな久しぶりの感覚を懐かしみつつ、何か妙な気分になった。 あの頃に比べると、なんだか静かだった。声が上がっていないわけではない。だけど当時とは明らかに違っている。 そうか、あの頃には「熱男」がいたのだ。 2006年に入団してその後チームの顔となって、2022年までソフトバンクに在籍した松田宣浩の声がすさまじかったのは、たぶん一生忘れることはないだろう。「よっしゃー!!」。 ホームランでも打ったのか、と思えばただのファウル。味方打者がバットを振るだけでたとえ空振りでも声を上げていたし、ボール球を見送ればそれを称えて叫んだ。そんな雰囲気が日常茶飯事だった。 川島慶三や本多雄一も活発だった。その前は川﨑宗則という元気印がいた。小久保"キャプテン"も、それはもうすごい迫力だった。