SNSで注目の葉っぱ切り絵作家・リトさん 発達障害の特性「過集中」で繊細な物語紡ぐ
枝から下りられなくなった子猫を鼻を伸ばして助けるゾウ、テントウムシの模様をまねるカメレオン―。葉っぱ切り絵作家のリトさんは、小さな葉の中に絵本のような物語を生み出す。発達障害の特性である「過集中」を生かしたいと始めた創作活動。知識も技術もない状態から、地道な努力を積み重ねてきたが、4年前に始めたSNSへの投稿で注目を集め、6月には作品を常設展示する「リト リーフアート ミュージアム 福島」(福島市)ができるなど、勢いに乗る。 【写真】テントウムシの模様をまねて、バス停に一緒に並ぶカメレオン 大学を卒業し、大手外食チェーンに就職したがうまくいかなかった。好きな業務に没頭して必要以上に時間をかけ、他の業務では集中力を欠いては怒られた。約7年で退職し、2年ほど後に発達障害の一つ「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と診断された。既に2度転職し、「また別の会社に行っても同じだろうな」と5年前、会社勤め自体をやめた。 子供の頃から細かい絵を描くことが好きだった。美術を学んだことはないが、大きな紙に幾何学模様のようなイラストをびっしり描いてSNSに投稿すると、いつもより反応があった。好きなことに発揮する高い集中力を生かし、「何かを作って表現することが、仕事につながるかも」と調べて出合ったのが、スペインの作家による葉っぱの切り絵だった。 シカが森の中で草をはんでいた。「なんてすてきなんだ」。憧れの思いで作り始め、毎日欠かさず作品を投稿した。「技術も何もないところからの挑戦。時間の全てを使うしかない」 ■「楽しんでもらえるものを」 初めの頃は生き物をリアルに描くなど、緻密さを追求したが、反応はいま一つ。「細かく切る腕を見せるだけではだめだ」。仕事として成立させるため、どんな作品が求められているかを模索し続けた。 投稿を始めて8カ月たった令和2年夏、「葉っぱのアクアリウム」と題した作品が大反響を呼んだ。ジンベエザメのいる水槽と、それを眺める人たちを描いたものだ。一気に注目を集め、福岡市のデパートで展示販売会が開かれた。 SNS上の存在だったファンの姿を初めて目の当たりにし、「続けてきて良かった。続けていかないとだめだ」と思えた。収入も得て、創作への向き合い方も変わった。「売れるためだけでなく、楽しんでもらえるものを作ろう」。くすりと笑えたり、ほっこりしたり、動物たちが繰り広げる絵本のような作品が次々と生まれていった。