「核兵器のない世界」実現を阻む“3つの後退”… 政策提言「ひろしまウォッチ」が発表される
米国・ロシア・中国のリスクが深刻
2つめの後退は「核兵器の増加」。 米国とロシアは冷戦時代の核戦力をアップグレードし、他の運搬方法を開発している。 また、米国はNATOの非核保有国への非戦略核兵器の配備を継続し、英国には非戦略核兵器の再配備の可能性がある。ロシアも、今年、ベラルーシに戦術核兵器を配備した。 米国政府の高官は、ロシアに対抗するため、今後数年のうちに米国でも核の配備数を増加することを示唆したという。 「ひろしまウォッチ」は「新世代の核兵器の生産と配備は直ちに中止しなければならない」として、米国・ロシア間の軍備管理交渉を再開すること、また中国とも交渉を行うことを提言した。 3つめの後退は「核実験再開の可能性」。 ロシアの政府関係者は、核兵器の実験を再開する可能性を示唆したという。また、米国のドナルド・トランプ元大統領の補佐官は、中国とロシアの核保有量の合計に対して優位性を維持するために、核実験の再開と核分裂性物質の生産を推奨していた。 核保有国のいずれかが核実験を再開すれば他の国もそれに追随することになり、核軍拡競争が再燃する危険性がさらに高まることになる。 また、11月5日に実施予定の米国大統領選挙には、共和党の候補者としてトランプ元大統領が出馬している。将来、米国が核実験の再開を検討するおそれは高い。 「ひろしまウォッチ」は、核実験は何としても阻止しなければならないとして、「核実験モラトリアムと包括的核実験禁止条約を維持すること」を提言する。 一方で、世界の国々の大多数は依然として核兵器を保有しておらず、2021年には核兵器禁止条約が発行された。 「ひろしまウォッチ」は、核保有国とその同盟国による行動は核兵器禁止条約の実現にはほど遠いものになっていることを指摘しながら、「公約を守らない政府の責任を追及し、より安全な未来のための具体的な行動を促していく」と宣言した。
広島市の平和式典にイスラエルが招待されているが…
記者会見には、湯崎英彦・広島県知事と、オーストラリア国立大学のギャレス・エバンズ特別栄誉教授もリモートで参加。 7月31日、長崎市は、パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けているイスラエルを8月9日の「長崎原爆の日」に行われる平和式典に招待しないことを発表した。 一方、広島市は8月6日に行われる平和式典にイスラエルを招待している。この判断について質問を受けた湯崎知事は「平和式典は広島県ではなく広島市の管轄」と断りを入れながらも、市の判断に同意を示した。 また、藤原教授は、イスラエルが非公表であるが核兵器を保有している可能性が高いことに言及したうえで、「いちど核兵器が落とされたらどんな事態が起こるか、という事実を知らせるためにこそ、イスラエルの政府関係者を広島に呼ぶことには意義がある」と語った。
弁護士JP編集部