難役に挑む福士蒼汰の新境地──映画『湖の女たち』インタビュー
大森立嗣が監督・脚本を手がけ、作家・吉田修一の同名小説を映画化した『湖の女たち』が5月17日に公開される。キャリアでも最難関と思われる役にどう挑んだのか。若手刑事・圭介役を演じる福士蒼汰が明かす。 【写真を見る】松本まりか、浅野忠信の好演が光る!(全12枚)
福士蒼汰のキャリアでも最難関の役
進化している。福士蒼汰は「アクターズ・ショート・フィルム4」(2024)では初監督を務め、最新主演映画『湖の女たち』では嗜虐に溺れる刑事役に挑んだ。本作で演じた圭介は倒錯した人物であり、自分でもなぜ殺人事件の容疑者・佳代(松本まりか)に支配欲を抱くのかわからない、という設定だ。福士のキャリアでも最難関の役と評しても過言ではないだろう。 そんな圭介とは異なる柔らかな雰囲気でスタジオに現れた福士は「原作を読んでいても圭介は何者なんだ?と困惑しました。脚本も原作に忠実だったので、圭介の心理が掴めないまま、撮影入りしました」と語る。 ならば、役づくりにどう取り組んだのか。福士がたどり着いたのは、“手放す”手法だった。 「家庭では子どもが生まれる、そして職場では先輩の伊佐美(浅野忠信)から事件を“片付ける”ようにとプレッシャーをかけられていて、圭介は閉塞感を覚えていたのだと思います。その状況だけは頭に入れて撮影に臨みましたが、後はその瞬間に自分がどう感じるか、ということだけを意識して演じました。大森立嗣監督も『どれだけ時間がかかってもいいから、本当に思った瞬間に言葉を発して、行動してほしい』とおっしゃっていたので、頭で理解するよりも自分の心がどう動くかを大事にしました」 とはいえ、自然体で感情に反応するアプローチは役者として積み上げてきたメソッドと対極に位置する。実際、「クランクイン後数日間は全然OKが出ませんでした」と苦労を振り返った。 「経験を積むと、どうしても『こう見えるからこう動こう』と考えるようになります。良いタイミングを見計らって、セリフを置きにいってしまう。特にテレビドラマは、わかりやすく感情を表現し、行動したほうが見やすいこともあると思っていて。でも、映画はそこに存在しているだけで芝居が成立することもある。もちろん、エンタメ性の強い作品であれば、感情を強調しますが、『湖の女たち』はそうではない。徐々に監督が求めているものを発見できました。芝居の引き出しが一つ増えた気がします」