【ラグビー】早慶戦へ。慶大の小野澤謙真は「自分の形を持ちたい」。
伝統の一戦に注目株が立つ。 慶大1年でこの春に日本代表候補となった小野澤謙真が、11月23日、東京・秩父宮ラグビー場での早慶戦に先発する。加盟する関東大学対抗戦Aの早大戦で14番を着る。夏の時点で決意していた。 「色んな人が応援してくれたり、見てもらえたりする舞台に出るチャンスがある。そこで堂々と自分の強みを出せるプレーヤーになりたい。そのために、ひとつずつ目標を達成していきたいです」 身長180センチ、体重85キロ。後衛のFBやWTBを務める。ボールをもらう前の動きとボールをもらってからのフットワークとの合わせ技で、タックルの間合いを外す。チームではゴールキッカーも任される。 もともとサッカー少年だった。静岡聖光学院中に通っていた頃は、清水エスパルスの下部組織に在籍。本格的にラグビーを始めたのは、高校に内部進学してからである。 中学3年時にパンデミックにさいなまれ、自粛期間中に父の宏時氏とラグビーをする機会が増えたのがきっかけだ。同学院OBの宏時氏は、日本代表で歴代2位の81キャップを持つ伝説的なWTBだった。 現役を退いてもなお強靭な足腰を誇る父とプレーし、息子は「15人で戦うラグビーで世界を目指してみたいな」と思うようになった。父には「頑張りな。でも苗字、邪魔だよ?」と独特の調子でエールを送られたようだ。 加速度的に進歩を重ねた。最終学年時は高校日本代表入り。日本代表候補となったのは、慶大に入ったばかりの今年5月のことだ。現役時代の父を現東京サントリーサンゴリアス、日本代表で重用した、エディー・ジョーンズヘッドコーチにピックアップされた。 菅平での代表候補キャンプでは、代表経験者でトヨタヴェルヴリッツの高橋汰地と出会った。自身と似た体格にあってプレー中のコミュニケーション、フィジカリティに長けていた高橋を、父と同様に手本とする。 「高橋汰地さん、山下楽平さん(コベルコ神戸スティーラーズ)が話しかけてくれて、ハイボールキャッチなどリーグワンで求められているスキルについても教えてもらった。マインド面でもレベルアップできました」 6月には、若手育成機関のジャパンタレントスコッド(JTS)の活動に参加。東芝ブレイルブーパス東京のリーチマイケル、元NECグリーンロケッツ東葛の田中史朗氏といった、日本代表としてワールドカップで成功を収めた面々の講話を耳にした。 他のJTS組が各自の強みを活かすのに長けていたため、小野澤も「ランが得意なので早めに(パスを)もらうなど、欲しいことを要求する」よう心がけるようになった。 「自分の判断力が追いつかないと難しいのですが、もっと考えて、速く動いて、要求して…と(意識)していきたいです。自分の形というものを持っていきたいです」 恵まれた環境を与えられる現状について、こうも口にした。 「半年前まで高校ラグビーをやっていた中でこうした場所で…。レベルアップが、加速したなと。何をやるべきかも明確になったので、これからそれに取り組みたいです」 タスクには体力、持久力の強化のほか、実戦で「自分の形」を再現するためのトライアルアンドエラーがある。 「(フィールド上での)目標は、ふたつあって。ひとつはキックカウンター、フィールドプレーでチームのアタックの起点になること。もうひとつは、自分の強みを活かすためのコミュニケーション(の質を高めること)」 早大2年の矢崎由高が代表キャップを獲得した中、こうも考える。 「誰もが目指す場所で、年の近い先輩たちが活躍している。いままでの合宿で学んだことを活かし、ひとつずつ、よくしていって、早く追いつき、追い越し、同じステージに立てるように…。まずは、ひとつひとつの試合でチャレンジしていきたいです」 国内有数のクラシコにあって力を発揮できるか。 (文:向風見也)