静かな超音速機X-59、エンジン初始動 NASAとスカンクワークスが開発中
NASA(米国航空宇宙局)とロッキード・マーチン・スカンクワークスは、静粛超音速実証機X-59(登録記号N859NA)に搭載するエンジンの地上試験をこのほど開始した。地上走行試験と初飛行前の最終的な主要システムの試験となり、X-59が初めて自身のエンジンを動力源としてシステムを動かした試験となった。 【写真】エンジン試験を始めた静粛超音速実証機X-59 地上試験中、ロッキード・マーチンは吸気口とノズルの性能、航空機とエンジンの構造、システム・インターフェース、エンジン制御アルゴリズムを検証。これまでX-59は外部電源を用いて電気や油圧、空気圧を得ていた。X-59のエンジンは、戦闘攻撃機F/A-18E/F「スーパーホーネット」のGE製F414-GE-100を基にしたものを使用している。 エンジンの地上試験は、初飛行前の重要な試験。燃料システムの管理、振動と温度の相互作用などを検証していく。エンジンの試運転が成功後、X-59は電磁妨害の影響、飛行中の故障のシミュレーション、非常用電源システムの検証などの評価を受ける見込み。これらの評価が完了後は、初飛行に向けて低速と高速の地上走行試験を計画している。 X-59は、静かな超音速飛行を実現し、将来の商業フライトに変革をもたらすことを目的として設計された他に類を見ない試験機。「ドン、ドーン」と打ち上げ花火や落雷のような音を伴う衝撃波「ソニックブーム」を抑え、陸上での商用超音速飛行の実現を目指す。米カリフォルニア州パームデールで、今年1月12日にロールアウトした。 FAA(米国連邦航空局)が許容可能な騒音基準の実現を目指すNASAの「Quesst」ミッションの目玉となるもので、NASAとロッキード・マーチンは今後、「慎重かつ体系的なアプローチを段階的に実施していく」という。 X-59は音速の1.4倍、時速925マイル(約1489キロ)での飛行を目指す。大きさは全長99.7フィート(約30.4メートル)、全幅29.5フィート(約9.0メートル)で、先細りした機首は全長のほぼ3分の1を占め、通常超音速機がソニックブームを引き起こす衝撃波を緩和する。また、Quesstのチームはエンジンを上部に搭載した機体を設計し、衝撃波が機体後方に合流してソニックブームを引き起こさないようにした。 スカンクワークスは、最先端技術の開発などを担うロッキード・マーチンの部門で、米空軍の偵察機U-2「ドラゴンレディ」や戦略偵察機SR-71「ブラックバード」、最後の有人戦闘機と言われたF-104「スターファイター」、戦闘機の「Fナンバー」を持つステルス攻撃機F-117「ナイトホーク」など、航空機史上に名を残す機体を多数開発している。
Tadayuki YOSHIKAWA