元お茶屋のホテル、経営するのは京都生まれ人気ブログの開発者 意外な転身の理由
「自分の作ったサービスで人を楽しませたい」。創業時の純粋な思いが、仕事に直接反映できないジレンマが募った。「経営は、僕より得意な人がいる」と14年に社長を退任した。
3年後、新会社「OND」を設立。現在は、リノベーションした町家やシェアハウスなど古民家を中心に紹介するサイト「物件ファン」や、ホテルとシェアオフィスを兼ねる「UNKNOWN KYOTO」などを運営している。
インターネットから不動産へ。全くの畑違いのようだが、近藤さんの思いは一貫しているという。 はてなで目指したのは、ネットを通じて人と人がつながる世界だった。人見知りで対面のコミュニケーションが苦手な人でも、日常や趣味をブログに書き込むことで交流の輪が広がり、生活が豊かになる―。
だがネットが浸透しすぎた今、人と人の距離が希薄になりすぎたと感じている。デザインが画一的でプライバシー性が高いマンションや、泊まるだけのホテルはその典型的な例ともいえる。
「オートロックとか遮音性とか、今の家やホテルはわざと人と人を遮断するように作られていますよね。どの部屋も人工的な真っ白い壁で…。なんかそれが面白くないなって思ったんです」
新会社で扱う古民家やシェアハウスは手入れや近所付き合いが欠かせない。煩わしさはあるかもしれないが、大切にすればするほど家への愛着も関係の親密さも増す。ホテルとシェアオフィスを兼ねる施設でも、異なる職業や居住地の人たちが出会い、新しい価値観を見つけている。
「今だからこそ、人はリアルなつながりを求めている。僕が提供できる場が、古い建物に変わっただけ」 社名「OND」には、人の温度感、生きている実感を取り戻す、という願いを込めている。