【ライブレポート】リーガルリリーが橋本絵莉子、kurayamisakaを迎えて『cell,core 2024』東京公演を開催
■「普段いろんなことを考えると思うんですが、その考えているときの気持ちのなかに、ひとつでも今日この場所この瞬間の音楽が残ったら良いなって思います」(リーガルリリーたかはしほのか) 【画像】『cell,core 2024』の東京公演の様子(ライブ写真全40枚) リーガルリリーが、12月10日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて『cell,core 2024』の東京公演を開催した。 リーガルリリー主催の対バン企画として毎年開催されてきた『cell,core』も今年で4年目。『cell,core 2024』は東名阪で開催され、大阪はyonigeとTETORA、名古屋はa子、東京は橋本絵莉子とkurayamisakaを迎えて行われた。 ■kurayamisaka トップバッターはkurayamisaka。若手オルタナティブロックシーンで頭角を現しているこのバンドとリーガルリリーの最初の接点は2023年5月8日。たかはしほのかが自身のX(旧Twitter)でkurayamisakaの「cinema paradiso」を紹介したところから始まっている。 ギター3本という特異なメンバー編成で放たれる轟音と、透明な内藤さちのボーカルを聴くと、今夜この空間で音を鳴らしている必然性を確信できる。 「theme(kimi wo omotte iru)」から幕明けたパフォーマンスは、「cinema paradiso」「farewell」と一気に進んでいく。 どこか日本的な情緒を感じるメロディ同士が繊細に絡み合いながらも、ステージ上で激しく楽器を鳴らすさまに圧倒された。 35分という短いセットのなか、確固たる世界観を届けるように続けざまに楽曲を紡ぎ、最後は最新曲「jitensha」を披露。 トップバッターかつ最若手にふさわしい瑞々しいパフォーマンスでフロアを盛り上げた。 ■橋本絵莉子 2番手に出演したのは橋本絵莉子。今年は2ndアルバム『街よ街よ』をリリースし勢力的に活動を重ねている彼女。 バンドセットを携え、「今日がインフィニティ」「かえれない」を演奏すると、そのあまりにキャッチーなメロディはさることながら、バンドのグルーヴ感とダイナミクスがフロアを支配し、自然と大きな拍手が巻き起こる。 「リーガルリリーに呼んでもらい、ありがとうございます。すごく刺激を受ける2バンドに挟まれて緊張しますけど、よろしくお願いします」とこの日最初のMCとメンバー紹介を挟むと、胸の高鳴るイントロが印象的な「踊り場」へ。 橋本絵莉子のもつメロディセンスと歌詞は、どこか歪でオルタナティブであるのに、どうしてこうも人を惹きつけるのだろうか。そしてその“歌”が、腰の据わった重厚なバンドサウンドのうえで紡がれる。 その後のMCで「リーガルリリーは私のワンマンのファイナルに観に来てくれて。そのときに初めてお会いして、なんてキラキラしてるふたりなんだろうと思って。今年最後のライブがこのイベントでうれしいです」と語る橋本。 そしてマイペースなMCから一転、ピンク一色の照明から始まる「ロゼメタリック時代」へ。アウトロの激しい轟音に酔いしれながらも、4ピースバンドならではのアンサンブルが心地いいインスト曲「離陸」へと続く。 「最後1曲やります! リーガルリリーありがとう!」と演奏されたのは「私はパイロット」。威風あるパフォーマンスを届け、橋本はステージをあとにした。 ■リーガルリリー いよいよ最後、リーガルリリーがステージへ。1曲目「1997」のベースイントロが一気にフロアの空気を変えた。自身がこの世界に生まれたことを自問自答する本楽曲は、ボーカル&ギターのたかはしほのかの誕生日でもある12月10日のオープニングナンバーにふさわしい。 続けて「17」「東京」と、ロックンロールと轟音で会場の熱量を一気に高めていく。そして、「ぶらんこ」「60W」「蛍狩り」「ムーンライトリバース」と、まるで音をつかさどる魔法使いのように静と動を使い分け紡いでいく。 途中、細胞と核が描かれた『cell,core』の丸いメインビジュアルの垂れ幕が月に錯覚するほど、その詩世界に引きずり込まれる。 この日最初のMCではベースの海が「バンドやアーティストってそれぞれ核を持ったひとつの細胞みたいだなって思っていて、それがお客さんにも届いて細胞分裂していくみたいにその輪が広がっていったら良いなと思って」と『cell,core』に込めた想いと対バンへの感謝を語る。 続けてたかはしが「普段いろんなことを考えると思うんですが、その考えているときの気持ちのなかに、ひとつでも今日この場所この瞬間の音楽が残ったら良いなって思います」「ライブハウスっていうのは、普段イヤフォンで聴いている音楽が、それぞれの心臓の鼓動や歩幅と合わさって、この場所で一緒に音楽を作っているなって感じています」と、今日この夜がいかに特別な日であるかを語る。 今年『kirin』という名盤を世に産み落とした彼女たちは、音楽の持つ力を信じ切っている。そこから紡がれる「天きりん」「キラキラの灰」に、会場全体が強く共鳴するかのようにひとつの大きな音楽を作り上げていた。そして、「それぞれの願いを込めて」とひと言放ち、本編最後の曲「ますように」を演奏し、深く丁寧なお辞儀をしてステージを去った。 鳴りやむことのないアンコールの拍手のなか、再び登場したメンバーは無言のまま音をかき鳴らした。チャットモンチーの「真夜中遊園地」だ。 チャットモンチーの持っていた核が細胞分裂をして、リーガルリリーが今この場でこの曲を鳴らしている高揚感に、会場全体の心拍数が大きく跳ね上がった。 「リスペクトを込めてカバーさせていただきました。部屋のなかでこの曲のライブ映像をずっと観ていた時期があって。まさかこうやってライブができる日が来るとは思いませんでした」とたかはしほのかがこの楽曲への愛を語る。 その後のMCで新曲「星とそばかすとダイヤモンド」を配信リリースすることと、2025年夏に東京・岩手・大阪でワンマンツアー『夏の大三角形』を開催することを発表し、最後に「リッケンバッカー」を披露。 三者三様というありきたりな言葉では片づけられない、アーティスト同士の強い共鳴と結びつきを感じた特別な夜。音楽を信じ切っている彼女たちだからこそ伝わる得体のしれない余韻を会場に残したまま、『cell,core 2024』は幕を閉じた。 PHOTO BY 藤井拓 ■リーガルリリー『cell,core 2024』 《東京編》 2024年12月10日(火)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) <セットリスト> ■kurayamisaka 1. theme(kimi wo omotte i ru) 2. cinema paradiso 3. farewell 4. evergreen 5. curtain call 6. kurayamisaka yori ai wo komete 7. jitensha ■橋本絵莉子 1. 今日がインフィニティ 2. かえれない 3. 踊り場 4. 宝物を探して 5. 人一人 6. ロゼメタリック時代 7. 離陸 8. 私はパイロット ■リーガルリリー 1. 1997 2. 17 3. 東京 4. the tokyo tower 5. ぶらんこ 6. 60W 7. 蛍狩り 8. ムーンライトリバース 9. 天きりん 10. キラキラの灰 11. ますように [ENCORE] 12. 真夜中遊園地(チャットモンチー cover) 13. リッケンバッカー
THE FIRST TIMES編集部