新型ロータス・エミーラには、エリーゼの頃の味わいが残っていた! MTで操るブリティッシュ・スポーツの魅力に迫る
ゾクゾクするほどカッコいい
このクルマの最大の魅力は軽快なコーナリングで、ドライバーを中心にしてクルッと曲がる、ミドシップらしさを満喫できる。興味深いのは車重約1.4tと、ポルシェの「718ケイマン」あたりと同じミドル級のスポーツカーでありながら、ライトウェイトスポーツカーのようにひらひらと身を翻して、パキッと曲がることだ。インテリアが高級になり、オーディオの音も上質になっているけれど、このクルマにはまだ、エリーゼの頃の味わいが残っている。 ドライブモードをTOURからSPORTに切り替えると、プラモデルからダイキャスト製ミニカーに変身するかのように、クルマ全体の印象がソリッドになる。エンジンは高回転をキープするようになり、右足の親指の付け根に力を入れるぐらいの微妙なスロットルコントロールにも、俊敏に反応してくれる。繊細なコントロールを受け付けてくれるから、かっ飛ばすような乗り方だけでなく、市街地を流すのも楽しい。 そしてSPORTモードでは、パワートレインと同じようにステアリングホイールの手応えもタイトになる。 TOURの状態でもトルクたっぷりで気持ちのいいエンジンだと感じていたけれど、SPORTのレスポンスは切れ味が鋭くて、ヤバいと感じるほど。ブ厚いのにシャープという、言葉にすると矛盾してしまう排気音が、ゾクゾクするほどカッコいい。 試しにサイドウインドウを開けると、美爆音を轟かせていることがわかる。住宅街や市街地では遠慮したほうがいいけれど、人里離れたワインディングロードや高速道路のトンネルに入ったら、窓を開けてアクセルペダルを踏みたい。 最後のエンジン車になにを選ぶのか……というのはクルマ好きなら朝まで語れるテーマだ。フェラーリのV12、マツダのロータリー、BMWのシルキーシックス、コルベットのV8などなど、有力候補は数多いけれど、直4の切れ味も捨てがたいのではないか。AMG製M139ユニットをブン回していると、そんなことも考える。 とにかくフットワークの俊敏さは軽量級で、エンジンのパンチ力はミドル級。このクルマは、スポーツカー界の井上尚弥なのだ。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)