OpenAI、Anthropicに並ぶ主要生成AI企業Cohere、法人特化の差別化戦略で企業における生成AI活用を促進
法人特化のCohere、企業の生成AI導入を促進する施策
Cohereの差別化戦略は、同社が2023年12月にリリースした新プロダクト「build-your-own connectors」にも如実に反映されている。 企業が生成AI活用を足踏みする要因の1つとして、生成AIの幻覚症状(hallucinations)問題が挙げられる。ユーザーのプロンプト(質問)に対して、生成AIが事実に基づかない「嘘」の情報を生成してしまう問題だ。 ChatGPTなど生成AIチャットサービスで、ユーザーが入力したプロンプトに対してAIが生成する回答は、そのAIモデルが持つ情報/学習データに依存している。一般的にAIモデルの学習データには、最新情報は含まれておらず、新しいものでも1年ほどの時間差がある。最新情報に関する質問をしても、ChatGPTが的確な回答を生成できないのはそのためだ。 OpenAIは、ウェブ検索機能をChatGPTに追加することで情報のラグを解消。それでも、幻覚症状は起こり得る問題で、コンシューマやエンタープライズに限らず、生成AIを利用する上での注意点となっている。 この幻覚症状問題に対し有効な対策といわれているのが、Retrieval Augmented Generation(RAG)と呼ばれるアプローチだ。RAGアプローチは、大規模言語モデルの既存知識に依存するのではなく、追加情報をモデルに与え、その追加情報を考慮した形で、回答を生成させる手法。多くの研究結果では、このRAGアプローチが幻覚症状の起こる確率を下げることが報告されている。 Cohereのbuild-your-own connectorsは、企業が自社データベースやサードパーティアプリケーションに保存されているデータとCohereの大規模言語モデルCommandを接続し、RAGベースの生成AIアプリケーションの開発を可能にするプロダクト。 Commandは、さまざまなビジネスユースケースを想定したデータによってトレーニングされた同社のフラッグシップモデルで、サマリー生成やコピーライティング、データ抽出などを強みとしている。 今回build-your-own connectorsがリリースされたことで、企業は自社データやサードパーティアプリケーションに保存されているデータを活用し、Commandの能力を拡張することが可能になった。契約書や技術文書、議事録など社内データをCommandに与え、企業各社それぞれの文脈に沿った形で、回答生成が可能になるということだ。 たとえばユースケースの1つとして、カスタマーサポートの改善が挙げられる。過去のサポートケース、製品マニュアル、FAQなどの情報を検索・参照し、それをもとにした回答を生成することによって、顧客からの問い合わせに対する精度を大きく改善することが可能となる。また、企業の知識ベースを活用して、新入社員のトレーニング資料やプロジェクトマニュアルを生成し、社員の知識共有とスキルアップを促進することもできるだろう。 さらにはRAGを含めたこのアプローチをとることで、現在すでに生成AIが広く活用されているマーケティング分野においても、コンテンツや広告コピーの精度を一段高めることが可能だ。企業の過去キャンペーンデータや顧客インサイトを基に、特定ターゲットに向け、広告コピー、プレスリリース、SNS投稿などをパーソナライズすることができるためだ。 build-your-own connectorsは、グーグルドライブやSlackなどサードパーティアプリケーション内に保続されている企業データとCommandモデルを接続することもできるため、ユースケースの可能性は広範囲にわたる。