福島・南相馬でマツ枯れ深刻 原因は害虫、景観悪化や倒木の恐れ
福島県南相馬市でマツが枯れる被害が止まらない。原因は木に害虫が侵入し、マツ枯れを起こす「松くい虫」によるものが大半。影響は住宅の庭や公園に加え、「相馬野馬追」の主会場となる雲雀ケ原祭場地にも及ぶ。市は伐採などを行うが有効な対策は見つかっておらず、倒木の危険性や景観への影響を危惧する声が上がる。 「ここ2、3年で増加し、昨年あたりから特にひどくなっている」。県造園建設業協会相双支部長の大甕和久さん(61)の元には、庭のマツが被害を受けたとの作業依頼が後を絶たない。一度白く枯れたマツが再び芽吹くことはなく、消毒などを行っているが、依頼時には既に手遅れとなっている場合も多い。 市によると、市内のマツ枯れは高止まりの状態で、毎年、市内のマツ林のうち約2.5%が新たに被害を受ける。2019年以降、被害面積は毎年100ヘクタールを超え、今年も108ヘクタールで確認。林野庁によると、昨年度の県内全体の被害は微減となり、全国でも減少傾向にあるが、昨年度は高温や少雨の影響で12年ぶりに被害量が増加した。 同市原町区の夜の森公園では昨年度、公園内のマツ70本のうち被害を受けた約3割の22本を伐採した。高さ10メートルを超えるものも多いことから、市は倒木の危険性を考慮して公園を一時封鎖し、補正予算で対応。薬剤処理なども必要で、1本当たり約30万円の費用がかかった。
相馬野馬追舞台にも被害
相馬野馬追の甲冑(かっちゅう)競馬や神旗争奪戦が繰り広げられる雲雀ケ原祭場地でもマツ枯れの被害があり、伐採などで対応している。大勢の来場者も訪れることから市は「万が一倒れたら大変。風情も損なわれてしまう」と懸念を示す。 特に被害が大きい要因として市は「東日本大震災からの復旧事業が優先で、思うように防除を進められなかった面もあるかもしれない」と対策が後手に回った可能性を示す。対策として虫の繁殖を防ぐ薬剤の注入があるが、コストが高いため、現実的ではないという。以前は薬剤の散布をしていたが、環境面を考慮して取りやめた。 現在は一部の公園での薬剤注入を除き、倒木の恐れのあるマツの伐採にとどまっており、担当者は「被害が大きく、対策をしても焼け石に水。収まるのを待つしかない」と苦しい状況を説明する。
マツ枯れ
微小生物の線虫「マツノザイセンチュウ」を媒介したカミキリムシの「マツノマダラカミキリ」が、マツの木に穴を開けて侵入することが主な要因。この線虫が樹木内に入ると、マツが反応して水を吸い上げる働きが阻害されるため、枯れる。林野庁によると、昨年度の被害量は全国で31万立方メートルで、県内は2.6万立方メートルだった。
福島民友新聞社