子育てを始めたばかりの親が一人になるのはなぜ「危険」なのか…英国心理療法士「孤独に苦しむのは赤ちゃんだけではない」
総務省の発表によると、2023年4月時点での日本の子ども(15歳未満)の数は、推計1435万人だそう。子どもがいれば、それだけ子育ての悩みもあることでしょう。今回は、英国の心理療法士 フィリッパ・ペリーさんが「親子の絆を深めるための秘訣」を、高山真由美さんの翻訳の元お伝えします。ペリーさんいわく、「新米の親が孤独を感じるのはふつうのこと」だそうで――。 【書影】親子の絆を深めるための秘訣とは!?フィリッパ・ペリー『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』 * * * * * * * ◆孤独は親も苦しめる 孤独に苦しむのは赤ちゃんだけではありません。 10カ月の慣らし期間があるとはいえ、私たちは赤ちゃんの誕生によって、ある日突然親になります。慣れない新生活のなかで一人ぼっちになるのは本当に危険です。 大家族で暮らしているとか、地理的にも心理的にも近い人々のなかにいるのでないかぎり、新米の親が孤独を感じるのはふつうのことです。 ユーリは32歳で、一児の母です。子どもの父親のヨハンは、子どもが生後2カ月のときに出ていきました。 「子育てを1人でやるなんて話が違うと思いましたけど、ソフィが生まれてすぐにヨハンは出ていきました」とユーリは言います。 ユーリはショックを受けてパニック状態になり、次に孤独に陥りました。たとえパートナーが出ていかなかったとしても、孤独は多くの親を苦しめる感情です。 ユーリの孤独感をさらに悪化させたのは、両親の無理解でした。
◆人間は群れをなす動物 孤独というと、社交スキルが低いとか、変わり者だからなどと思われがちです。孤独には不名誉と恥がついてきます。しかしそういう考え方はやめるべきです。 孤独はあらゆる人を苦しめるとても強い感情です。必要なことをするように(一緒にいる相手を見つけるように)という警告なのです。 人間は群れをなす動物です。 私たちは、食べる必要があるときに空腹を感じ、危険な場所から逃げる必要があるときに体に痛みを感じ、誰かに受けいれられていると思いたいときに孤独を感じます。 孤独は喉の渇きや飢餓感と同じように、必要な感情です。危機的状況にあるときにそれを無視すれば、心と体の健康を壊す大きな原因になります。 1人になるのがそんなにいやなら、何かのグループに参加するか、もっと友達をつくればいいのではないかと思うかもしれません。 しかし、残念ながら、そんなに簡単ではありません。ユーリは疲れきっていて、孤独に対処するためのエネルギーは残っていませんでした。
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