【タイ】日系、HVで状況打開目指す 車市場低迷の中、エキスポ開幕
自動車展示・販売会「第41回タイ国際モーターエキスポ2024」が29日、首都バンコク北郊ノンタブリ県の展示会場「インパクト」で開幕する。四輪では42ブランドが出展し、新モデルなどをアピールした。国内の車市場で低迷が続く中、日系はトヨタ自動車をはじめ、ハイブリッド車(HV)を訴求して差別化する姿勢が目立った。ホンダはHVに加え、バッテリー式電気自動車(BEV)のスポーツタイプ多目的車(SUV)を発表している。 タイ工業連盟(FTI)の統計によると、今年1~10月の国内の自動車生産台数は前年同期比19.3%減の124万6,868台。FTIは当初の生産台数目標を190万台としていたが、7月に170万台に引き下げ、先にはさらに150万台に引き下げた。家計債務の高止まりを受け国内の金融機関がローンの基準を厳格化していることが大きく影響している。単純計算では今年は年間150万台ほどのペースとなるが、これはコロナ禍で世界的に販売が低迷した2020年の143万台以来の低水準となる。 国内で販売シェアトップの38%を握るタイ国トヨタ自動車(TMT)は、「ハイラックス・フォーチュナー」や「GRカローラ・GRヤリス」の展示に加え、「ハイブリッド・ゾーン」を設置。同社が強みを持つHVを強く押し出す姿勢を見せた。TMTの山下典昭社長は「国内の自動車販売が大幅に縮小する中、今年1~10月に、(BEVやHVなどを含めた)電動車は前年同期比19%増の16万8,000台販売された」とコメント。なかでも、BEVの成長率は1%にとどまったが、HVは42%増えて10万台に到達した。TMTは今年に4万8,000台のHVを販売し、シェアは電動車で47%。09年に「カムリ」のHV版を投入して以来、23万台の実績があると述べた。会場では、TMTのHVのラインアップから、先月発売した新型のカムリのほか、「ヤリス・クロス」、「カローラ・クロス」、「カローラ・アルティス」、「イノーバ・ゼニックス」を展示。新型カムリは4,000台の予約が入っているという。 山下氏は記者会見でタイの自動車市場について、「今年の輸出は19年とほぼ同水準だが、国内販売が大きく落ちている」とし、国内販売が60万台を切るペースで推移しているのは「09年と同じ水準で、異常な低迷だ」と指摘した。一方、「タイの国内総生産(GDP)の成長率は第3四半期(7~9月)に3%成長し、政策金利の引き下げもあった。急激な回復は難しいかもしれないが、今後は緩やかに回復していく」と前向きな姿勢を見せた。また、「マジックのような解決策はない」とし、「政府と対話し、可能な限りサポートをもらいながら、産業をしっかり支えられるよう頑張りたい」と話した。今年のモーターエキスポでの受注目標については、「23年が7,300台だったが、今年は景気が低迷していることから不透明」とした。 ■いすゞ「ピックアップの回復見えず」 国内でシェア2位のいすゞ自動車のタイ販売会社、トリペッチいすゞセールスは15モデルを展示。新型のディーゼルエンジン「2.2Ddiマックスフォース」や同「3.0」、環境性能が高い「1.9Ddiブルーパワー」エンジンを搭載したモデルを訴求した。「2.2Ddiマックスフォース」は163馬力のエンジン。加速力に優れる一方で、同クラスのエンジンと比較して燃費効率は最大10%高く、二酸化炭素(CO2)排出量は最低水準となる。220万キロメートルの走行性能が確認されているという。同社の波多隆社長は、「ディーゼルエンジンの世界的なトップランナーとして、日常生活やライフスタイル面での多目的車(MPV)のニーズを満たしていく」とコメントした。同社が主力とするピックアップの国内販売は、今年1~9月で前年同期比40%減の15万3,504台と特に落ち込みが激しい。波多氏はNNAに「ピックアップ市場の回復時期は読めない。政策金利の引き下げやローン緩和によるプラス作用は、現状のところ販売台数に表れていない」と話した。 シェア3位のホンダオートモービル(タイランド)は、「HR―V」や「シティ」、「シビック」の新型HVに加え、BEVのSUV「e:N1」を展示した。「e:N1」は、現在レンタカーショップで借りることができるという。今回は10モデルを展示した。 ■三菱自、小型MPVでトップ 三菱自動車のタイ法人ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)は、テーマを「eモーション(e:MOTION)」とし、「エクスパンダー」や「エクスパンダー・クロス」のHVなどを展示した。同シリーズはタイの小型多目的車(MPV)市場でトップのシェアを持つという。会場では「メガディール」として、購入者に最大16万バーツ(約70万円)相当の特典を提供する。MMThの辻昇会長はタイ市場の落ち込みについて「サプライヤーも厳しい環境に直面している。家計債務の問題であるだけに、回復には時間がかかるだろう」との見通しを示した。また、輸出についても「タイバーツ高が懸念材料になっている」と述べた。 このほか、タイ日産自動車(NMT)は、7シーターのMPV「セレナ」のマイルドハイブリッド版を発表。販売価格は146万9,000バーツからとなり、予約を開始した。マレーシアからの輸入で、来年1月の納車が予定されている。来年発売を予定しているHV「セレナ e―POWER(eパワー)」は、日本からの輸入になる見通し。NMTの代表を務める藤木稔大氏は、タイでの生産について「生産性と効率性を高めるため、老朽化が進む第1工場の生産の一部を第2工場に集約する」と説明。第1工場は稼働から40年以上たっており、14年に稼働した第2工場をアップグレードし、生産を集約する。ただし、第1工場は閉鎖しないという。同社はサプライヤーに対して、生産の集約について説明済みとしている。藤木氏は、「24年のタイ市場全体の販売台数は53万~54万台」と予測。来年は55万 ~57万台を見込む。