【坂口正大元調教師のG1解説】努力していれば運も出会いもまた巡る 北村友から大切なこと学んだ
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <ホープフルS>◇28日=中山◇G1◇芝2000メートル◇2歳牡牝◇出走18頭 北村友騎手の涙に、私ももらい泣きしました。1年以上の休養から復帰して2年半あまり、G1の表彰台に戻ってきました。22年6月の復帰週だったと思いますが、うまく馬を御せず、コーナーで大きくふくらんだシーンを鮮明に覚えています。あれだけのジョッキーでも、長く休むとこんなことになるのかと。大変な道のりだったと想像しますが、努力していれば必ず見てくれている人はいますし、運も出会いもまた巡ってくるものです。 クロワデュノールの騎乗は完璧でした。スタートをしっかり出して、ポジションを確保。1000メートル通過61秒4という遅い流れでも難なく折り合い、最後は速い上がりを繰り出しました。もともと古馬のような競馬ができる、センスのいい馬ですが、それを余すところなく引き出しました。 昨年、レガレイラが記録したレースレコードが2分0秒2。今回は2分0秒5でしたが、1000メートル通過は昨年の方が1秒4も速く、それだけ流れた中でのレースレコードでした。今年は向正面でファウストラーゼンが動いてようやく流れましたが、後ろの馬には厳しい展開。クロワデュノールのセンスがより生きる競馬となりました。父のキタサンブラックによく似た脚の長い体形で、まだまだ成長の余地を残します。人馬とも来春が楽しみです。 2着ジョバンニは前走の京都2歳Sで、エリキングにこそ敗れましたが、後方から外を回って追い上げた内容に、なんと強い馬だなと思った1頭です。確実に脚を使えるタイプですし、今回もいい脚で追い上げてきました。この2馬身差を詰められるかどうかは、今後の成長次第でしょう。 3着ファウストラーゼンには驚きました。向正面で最後方グループから一気に先頭まで押し上げたことが、結果的には正解でした。杉原騎手の思い切りが功を奏しました。 今年も1年間、ありがとうございました。悲しい出来事、残念なニュースもあった中央競馬ですが、最後に北村友騎手の涙を見て、改めて大切なことを学んだ気持ちです。(JRA元調教師)