黒田剛「モチベーションを高く維持し続けなければ叶えられない目標を設定すべき」【町田快進撃の秘密④】
常勝軍団、青森山田高校からFC町田ゼルビアの監督に転じ、わずか1年でJ2からJ1に昇格、そして2024年J1での大躍進させた名将、黒田剛監督。著書『勝つ、ではなく、負けない。』の刊行記念トークイベントで太田宏介氏と対談した連載4回目は、「リーダーの目標設定」について。 【写真】トークイベントの様子
「いつも不安でいたい」そんな自分がいる
太田 チームによって目標設定はいろいろだと思いますが、黒田さんの目標設定は、短期、中期、長期と、すごく細かいですよね。目標設定に向けて、黒田さん自身が大事にしていらっしゃることを教えていただけますか。 黒田 これも自分目線でなくて、選手たちだったらどう考えるかという目線で設定していかなければならないと思っています。高くなり過ぎず、低くなり過ぎず、ほどよいさじ加減でモチベーションをキープできるセンスというのが、すごく重要なのです。 最初から低い目標とか無難な目標を設定すると、選手自身が油断してしまったり、または、監督がちょっと油断してしまったりすると、選手は間違いなくそれを感じ取ります。 高くすることによって、自分自身は不安を感じるんですよね。プレッシャーも感じるし、日々重圧もありますし。でも、もしかしたら、その不安を毎日感じていたいのかもしれませんね。 すべてに満たされていて、常におなかいっぱいの状況はつくりたくなくて、あえて「不安でいたい」そんな状態をつくりたくて、好んで(高い目標を)設定しているという感覚はあると思います。周囲から「難しいだろう」と感じてもらえた方が間違いなくモチベーションは上がりますね。 ゼルビアの監督一年目にJ2優勝を掲げましたが、周りからは「そんなの無理だ」と、散々言われました。だからこそ、2024年はJ2残留とか降格という争いではなく、上位に居続けることに意味があると考えましたし、選手たちにもその感覚を持たせることが大切だと思っていました。また今年は海外でのプレー経験がある選手や、日本代表でプレーした選手たちが加入したので、その選手たちのためにも、低い目標設定ではなく、あわよくば最後まで優勝争いしてやるという気概を持って、目標設定を高くしたところはありますね。 言うなれば、モチベーションを高く維持し続けなければ叶えられない目標設定です。目標なんていつでも変えられるのだから、最初は5~10位以内、次は5位以内、で、ここまできたら優勝と、選手も我々も不安を感じながら日常を過ごせるような目標設定をすればいいんじゃないかなと思っています。