初代BMW 5シリーズに匹敵! トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(2) マニア間の伝説
当時唯一といえたミドルクラスの高性能ワゴン
3.0L V8エンジンを積むが、2台ともオリジナルの2.5 PIより大幅に速いわけではない。最高出力の差は15psほどで、0-96km/h加速を1.0秒縮めたくらい。それでも、直列6気筒エンジンより滑らかに回り、サウンドも良い。高回転域でのパワー感も勝る。 ラインズが手掛けたサスペンションのおかげで、操縦性は素晴らしい。もとの2.5 PIも優れていたが、ステアリングの精度も向上し、コーナリング時の安心感が高い。控え目なパワーアシストを介し、このクラスとしては最高水準のフィードバックがある。 エステートの方が、コーナーでのボディロールは大きめ。現代的なモデルと変わらないペースで、カーブを巡っていける。車重が軽いサルーンは粘り強く路面を掴み、ひときわスポーティだ。 たくましいV8エンジンと確かなグリップ力で、高速域の印象も2.5 PIを凌駕する。ラインズは、正式な量産モデルになれば、1万台は売れるのではないかと考えていた。実際に体験してみると、それは過大評価ではなかったと理解できる。 1977年にメルセデス・ベンツ280 TEが登場するまで、ミドルクラスの高性能ワゴンは存在しなかった。結果として先手を切った、そのS123型は、ブランドを代表するようなモデルへ成長した。
有能なスポーツサルーン 初代5シリーズに匹敵
とはいえ、筆者がより強く感銘を受けたのは、スタッグ・サルーン。ラインズは、エステートの方が気に入っていたようだが、現在のトライアンフ・マニアで一層の伝説的な扱いを受けているのも、サルーンの方だ。 軽量なシャシーに静かなキャビン、有能なV8エンジンが融合し、唸るほどの訴求力がある。当時のブリティッシュ・レイランドは、ローバーP6というV8エンジンのサルーンを擁し、ライバルとしてジャガーも存在し、量産化されなかった理由もわかるが。 1970年代として、有能なスポーツサルーンに仕上がっていることは間違いない。同時期のジャガーより軽く機敏で、初代BMW 5シリーズに匹敵したといっていい。この2台が2024年まで生き抜いたことが、とても喜ばしい。 エステートは、さらに2台が残っていることが判明している。1台はオランダ(ネザーランド)で、もう1台はグレートブリテン島にあるという。意外と気づかれていないアトランティック・ガレージ仕様も、ひっそり生存するのかもしれない。 シャシー番号にAGの頭文字が振られていないか、トライアンフ2000や2.5 PIのオーナーは、1度確認されてみてはいかがだろう。実はマニア垂涎のコレクターズアイテムだった、という可能性もゼロではない。 協力:マイク・メンヘニット氏、トライアンフ2000/2500/2.5レジスター、ハザリーナー・ホテル&スパ
トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(1970~1976年/英国仕様)のスペック
英国価格:3000ポンド(新車時)/5万ポンド(約950万円/現在)以下 生産数:25台+26台(コンバージョン) 全長:4445mm 全幅:1651mm 全高:1422mm 最高速度:194km/h 0-96km/h加速:8.9秒 燃費:6.7km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:1250kg パワートレイン:V型8気筒2997cc 自然吸気SOHC 使用燃料:ガソリン 最高出力:147ps/5500rpm 最大トルク:23.4kg-m/3500rpm トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)
チャーリー・カルダーウッド(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)