【原油価格】中国の原油需要ついにピーク、供給過剰懸念で60ドル割れ現実味…リスクは中東全面戦争
■ イランとイスラエルの全面衝突リスク 原油価格の唯一の押し上げ要因は中東地域のさらなる混乱だ。 パレスチナ・ガザ地区に代わり紛争の中心地となったシリアは主要な産油国ではないものの、地域全体のパワーバランスにとって極めて重要な戦略上の要衝だ。 筆者は12月11日に公開されたコラムでアサド政権の崩壊が引き起こすイランとイスラエルの全面衝突のリスクについて述べたが、日を追うごとにその危険性が高まっていると危惧している。 反体制派がアサド政権を打倒した後、イスラエル軍は50年ぶりにシリアとの非武装緩衝地帯に入り、イスラエルに対して使用される可能性がある兵器を破壊するための攻撃を続けている。最悪の事態を想定した予防措置だとしているが、仇敵であるイランが主導する「抵抗の枢軸」の一員だったシリアでの影響力拡大の狙いがあるのは間違いないだろう。 これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は11日、「シリアのアサド政権崩壊は米国とイスラエルが計画したことだ。だが、イラン主導の同盟はさらに強くなるだろう」と敵意を露わにしている。 トランプ次期大統領も12日に公表されたタイム誌のインタビューで、イランと戦争する可能性はありうることを示唆した。米国とイスラエルがイランと全面衝突することになれば、世界が恐れてきたホルムズ海峡封鎖が起きるのではないかとの不安が頭をよぎる。 中東地域のテールリスク(確率は低いが、発生すると巨大な損失をもたらすリスク)が現実化しないことを祈るばかりだ。 藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー 1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
藤 和彦