LiLiCo ×よしひろまさみち が「サーチライト・ピクチャーズの“過去・現在・未来”」を語る [ 設立30周年記念特集 #01 過去編 ]
ディズニーのもとで広がった可能性
よしひろ サーチライトがフォックスとともにディズニーの一部になった時、実は私は不安だったんです。せっかくここまで築いてきたものが、ディズニーの色に染まってしまったら台無しになるんじゃないかと。でも杞憂でしたね。そこはちゃんと守ってくれた。 ――当時、みなさん不安そうでした。そこを残せたのは、やっぱりいろんな人が声をあげたからだと思います。ディズニーによる買収が発表される直前に、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)がオスカーを獲りました。その彼も声を上げていたし、スカーレット・ヨハンソンなどもそうです。 よしひろ クリエイターや役者が声をあげることはすごく大事なことですよね。 ――結果として、逆によくこういう大胆な企画を通しているなというのが割と続いていると思います。 よしひろ ディズニーがフォックスを買収したのがちょうどコロナが来ちゃったという頃だったじゃないですか。あのタイミングだったから、サーチライトがやりそうな企画を、Netflixが全部持っていっちゃった。これは本気でヤバいのではと思ったんだけど、ちゃんといいところは残していたんですね。 LiLiCo しかも、サーチライトがディズニーになってから、存在も目立つようになった。 よしひろ 20世紀スタジオをはじめ、他のレーベルと全然毛色が違いますからね。 LiLiCo それまではサーチライトって言ってたのは業界の内だけって感じだったのが、一般の人も「ディズニーのミニシアター系」みたいな形で存在を認識するようになった。それと大きいのがディズニープラス(Disney+)の存在です。サーチライトにいい作品がたくさんあるのに、これまではそれこそ中古のDVDくらいしか観る方法がなかった。それが今は配信で間違いなく観られます。それは本当にありがたいと思って。 よしひろ 最初にディズニープラスがローンチした時には、旧フォックスの作品が全然入っていなくて、「うわあ、せっかく配信始めたのにこれで大丈夫なのか?」と思ったんです。が、プラットフォーム内でブランディングがされて、スターがローンチしたところでドーンと作品が来たのは忘れられません。あのときは、ああよかったと安心しました。 LiLiCo ディズニープラスのサービスが始まった時に連載コラムを頼まれたんだけど、最初のうちは作品数が少なくてクリスマスなのに『わんわん物語』(1955)くらいしかなかった(笑)。それとスウェーデンのクリスマスを結びつけて何とか書いたのを覚えています。そのあと、2023年にディズニープラスから配信されたドラマ「季節のない街」に私も出ていたんですが、その時にわかったのは、結構みんな観ていたんです。反響があってびっくりしました。 ――いろいろな配信サービスがありますけど、ディズニープラスの、特にアクティブユーザーの数は他と比べてもかなり多いんじゃないかと思います。 LiLiCo 本当にいろんな可能性のある独自のプラットフォームだよね。ディズニープラスのラインアップの中にサーチライトの作品が入っているというのは、ここ最近の映画界に対して一番感謝したいところです。 ――そこが、ディズニーがフォックスを買収した一番の目的だったと思います。結局ディズニーってどうしても色が決まっちゃうから、そうじゃないものが欲しい。そうすると、ディズニーの中でサーチライトが目立っちゃうというのは多分意図していたことだと思います。だから、今回の30周年記念の企画というのは、そういう裏テーマもある。決して旧作を劇場で観られるというのだけが目的じゃなくて、他の作品たちも配信で観られますよというのを前に出していかないと、というのがあると思うんです。 LiLiCo ときどき、「LiLiCoさんは1年間でどのくらい映画を観ますか」とマウントをとってくる人がいるんですが、映画通、映画好きというならば、サーチライトの作品はぜひ観てほしいですよね。 ――これまでの作品数は200本強だそうです。 LiLiCo 来年はサーチライトの作品を見るというテーマで過ごしたら楽しいんじゃないですか(笑)。もちろん1年では難しいかもしれないので5年くらいかけて。その価値はあると思います。
取材 / otocoto編集部 文・構成 / 佐々木尚絵