「夜逃げ屋」は「ボロボロに虐げられた」人の最後の「セーフティーネット」 現場スタッフが語る「存在意義」とは
DV被害などから逃れるための引っ越しを請け負う「夜逃げ屋」の実態を描いた漫画がある。作者は宮野シンイチさん。夜逃げ屋でスタッフとして働いている。100件以上の現場を経験した宮野さんが感じた夜逃げ屋の「存在意義」とは何か。 【漫画】ストーカーはまさかの飛び降り...「夜逃げ屋日記」を読む【無料】 * * * ■考えは180度変わった 夜逃げ屋にやってくる依頼者は、みんな心身ともにボロボロになってからやってくる。 スタッフとして夜逃げ屋に関わる前は「なぜそんな相手を選んだのか。なぜ早く逃げなかったのか。普通は、見抜けるのではないか」という思いもあったという。 「今は180度変わりました」 考えが変わった理由を、宮野さんはこう語る。 「DVの加害者たちを見ていると、彼らも初めから暴力をふるったりモラハラな行為をしたりしたら、交際や結婚ができないということをわかっているんですよね。なので、正体を隠して付き合って、結婚したり子供ができたりしたとたんに、もう逃げられないだろうと豹変する。被害者は『気付かない』のではなく、『気付けない』のです」 ■DV加害者は「いい人」「立派な人」 DVの加害者は外面を整えるのがうまく、職場や地域では「いい人」「立派な人」で通っていることが多い。依頼者の夫は親たちから信頼されているPTA会長で、裏の顔はDV夫、といったケースもあった。 宮野さんは、依頼者がボロボロになるまで長く決断できなかったことにも理解を示す。 たとえば、夫のモラハラに苦しんだある女性依頼者のケース。 幸せな新婚カップルだったが、新婚旅行でハワイに行ったとたんに、優しかった夫が豹変した。 ホテルの部屋に入ると女性はベランダに出るように命令され、部屋に一歩も入れてもらえない。食事もベランダだ。帰国後もモラハラを通り越した、信じられない加害行為が続いたが、その後、夜逃げを決断するまでに1年もかかった。