憶えてる? 日産「ティーノ」が2列6人乗りのユニークなパッケージングで登場、189.6万円~…でも1代限りで終了【今日は何の日?12月22日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日12月22日は、日産自動車のコンパクトワゴン「ティーノ」が誕生した日だ。ティーノは、コンパクトワゴンでありながら3人掛けの2列シートというユニークなパッケージングを採用、人気を獲得している3列シートのミニバンとは異なるコンセプトを提案した。 TEXT:竹村 純(JUN TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 ティーノのすべて、ホンダ エディックスのすべて ■コンパクトなボディなのに2列6人乗りができるティーノ 1998(平成11)年12月22日、日産自動車のコンパクトハイトワゴン「ティーノ」がデビューした。前席に3人が乗れる2列6人乗りという個性的なパッケージングを採用、チャレンジングなレイアウトだったが、市場はその価値を認めず1代限りで終焉を迎えた。 3人乗車×2列シートという個性派ハイトワゴンのティーノ誕生 多人数が乗れて実用的な3列シートのミニバンが人気となりつつあった1990年代末の1998年12月のこの日、日産から3人掛シート×2列の個性的なパッケージングを実現したハイトワゴンのティーノがデビューした。 サニー系のシャシーをベースに、ホイールベースはサニーと同じ2535mmだが、全長は4270mmと75mm短く、その代わりに全幅は65mm大きい1760mmの構成。そのため、規格上は3ナンバーボディである。シートアレンジは、3人掛シート×2列が基本だが、後部座席は取り外すことも可能で、取り外せば膨大な広さの荷室が使える。 外観は、4ドアの1.4ボックスワゴンでフロントウインドウの傾斜を強めて全体的にはスタイリッシュなフォルムで、開放的な室内スペースも魅力だ。 また安全性能についても、危険を予知・回避・被害を最小にすることを前提にしたトリプルセーフティ思想に基づいた安全技術を適用。パワートレインは、最高出力135ps/最大トルク18.2kgmを発揮する2.0L直4 DOHCとハイパーCVTとの組み合わせ、燃費に優れた120ps/16.4kgmのリーンバーン1.8L直4 DOHCは4速ATとの組み合わせ。 車両価格は、2.0Lエンジン仕様が189.6万~207.6万円、リーンバーン1.8L仕様が169.7万/175.7万円。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で2.0Lが222万~244万円、1.8Lが198万/205万円に相当する。 3人×2列シートという個性的なコンセプトは、市場ではあまり評価されず、2000年のマイナーチェンジでは前席2人、後席3人の5人乗り仕様を追加、2002年のマイナーチェンジでは6人乗り仕様が廃止されるというように方向転換を強いられた。 日産初のハイブリッドをティーノに採用 日産初のハイブリッドは、2000年にティーノに100台限定で生産された。 エンジンは、ミラーサイクルを採用した最高出力101ps/最大トルク14.4kgmを発揮するハイブリッド専用エンジン。組み合わせる交流同期モーターは、23ps(17kW)/最大トルク15.8kgmで、リチウムイオン電池(3Ah)を2個直列で搭載した。 モーター出力が大きくないことから、基本的にはマイルドハイブリッドであり、発進時は低回転でトルクが大きいモーター、エンジンが低燃費な速度域ではエンジンを主に使用し、減速時には回生制御を行なう。伝達効率の高いCVT と組み合わせて、スムーズな加減速と10・15モード燃費で23km/Lを達成した。 ティーノHEVは、車両価格315万円で100台の限定で販売されたが、このハイブリッドシステムは他のモデルに展開するような量産化はされなかった。 結局、ティーノは2003年5月に1代限りで国内向けの販売を終了、欧州では2006年まで販売された。 その後、ホンダから同じコンセプトのエディックスが登場 ティーノの販売終了の翌2004年に、ホンダから同じコンセプトの2列6人乗りのワゴン「エディックス」が登場した。ホンダは、3列シートのミニバン「オデッセイ」、「ステップワゴン」、「ストリーム」で大成功をおさめており、それに続く新たなミニバンの提案だった。 基本的なコンセプトはティーノと同じで、ショート&ワイドなフォルムながらエディックスはスポーティに仕上げられていた。パワートレインは、2.0L直4 i-VTECエンジンと5AT、1.7L直4 VTECエンジンと4ATの2つの組み合わせ、駆動方式はFFとリアルタイム4WDが用意された。 エディックスも、その個性的なパッケージングとフォルムが注目され、一般的なロングボディのミニバンの使い勝手に不満を持っていた一部のユーザーには受け入れられたが、販売台数は伸びず2009年にこちらも1代限りで販売を終了した。 ・・・・・・・・・ ティーノが提案した2列6人乗りは革新的なパッケージングではあったが、人気の3列シートミニバンの牙城を崩すことはできなかった。前列に3人が座ることが何となく窮屈そうに見え、結局のところ中途半端なミニバンに映ってしまったことが不評の原因ではないだろうか。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純