箱根駅伝Stories/帝京大・福田翔「走るからには良い結果で終えたい」 最初で最後の箱根路で輝きを
出雲、全日本は長距離区間で粘りを
「1区しかできないと、監督も起用しにくいと思います。“自分の幅を広げたい“新しいところを見せたい”という意味を込めて、後半の単独走になる区間をあえて志願しました」 そのとおりに、福田は出雲では最長区間の6区を任された。5区で9位まで順位を落としたが、福田は区間8位で8位に上げてフィニッシュテープを切った。続く全日本は、17.6kmある7区で出番が回ってきた。チームはレース中盤で順位を落としていたが、6区の楠岡由浩(2年)が区間4位と好走。その勢いを受けて、福田はシード権圏内の8位に押し上げる活躍を見せた(区間8位)。 「どちらも前を追う展開になりました。特に全日本はシード権ギリギリのラインで、タスキを受けました。最初突っ込んで入って、後半粘るというレースが必要で、2つの駅伝ではそれが試されました。そういうレースができたことは大きな手応えになりました」 自身の役割を果たし、箱根に向けても好感触を得ることができた。一方で、他の強豪校のエースとの力の差を痛感したのも事実だ。 「全日本から箱根までの2ヵ月間で、まだまだやるべきことがあると実感しました。山中(博生、4年)がエースに成長し、『山中に任せればいいか』という考えになってしまいがちです。山中に任せきりではなくて、同等か、勝てるだけの力をつけて、試合で発揮しないといけません」。絶対的エースで主将の山中を生かすためにも、箱根では自らもエース級の走りを見せる覚悟だ。 そして、福田は例年は全日本の後に記録会に出場していたが、今季はレースを回避して、箱根に備えている。「毎年ここで調子を崩してしまったので、記録会でタイムを狙うのではなく、疲労を抜くことを第一に考えて、落ち着いて練習を積むという選択を取りました」と話す。 「箱根は距離が長くなるので、疲労を抜いた後にもう一度脚作りをしたり、練習量を増やしたりと、自分でできることをやってきました。出雲と全日本以上の走りができるようにがんばっています」と明かした。 全日本後の日体大長距離競技会などではチームメイトに好記録が相次いだ。箱根出走が確定していない状況だけに、チーム内の競争が激化。焦りがあったのも事実だ。 だが、福田はそんな状況をも前向きに捉えている。「逆に、そのおかげで、全日本が終わってからも、気を緩めることなく“まだまだ自分も危ないんだな”という自覚を持って練習にしっかり取り組むことができました。『あいつがあれぐらいで走れるなら、自分も』と思うこともできましたし」。気持ちを強く保ち続けた。 福田にとって箱根駅伝は、一度は諦めた夢。強豪の広島・世羅高出身だが、高校時代はケガばかりでなかなか結果を残せず、競技には見切りをつけるつもりだった。実際、卒業後には自衛隊への就職が決まっていた。ところが、進路が決まると結果が出始めた。5000mの自己ベストを14分26秒まで伸ばした。そして、密かにあこがれていた帝京大から声がかかり、競技を続けることを決めた。 過去3年間は箱根駅伝に縁がなかったが、今度はそのチャンスを逃すつもりはない。 「悔いなく終えたいというのはもちろんですが、最初で最後の箱根駅伝を走るからには、チームが勝って、個人でも勝って、良い結果で終えたい。『終わりよければ全て良し』。その言葉通りになるような結果で、箱根を終えたいなって思っています」 チーム目標は過去最高順位(4位)の更新。集大成のレースで、福田は4年分の思いを箱根路に解き放つ。 ふくだ・しょう/2002年6月9日生まれ。広島県三原市出身。広島・本郷中→広島・世羅高。5000m14分07秒96、10000m28分56秒88、ハーフ1時間2分03秒
和田悟志/月刊陸上競技