「だから新規事業は失敗する」ここが欠落した視点 「小さく賭け、ためらいなく修正」が正しい方法
リスクテイクを伴う事業戦略は、関係者が相当強く腹落ちしないと、実行されない。この事例では、関係者の腹落ち感を高めるために、重要仮説の明確化が役立った。仮説は、戦略目標を達成するために何をすべきか、という具体的かつ低リスクの行動指針を示す。 実現すべき重要仮説が合意されたことが、事業環境の変化に対する具体的な行動を引き起こしたのである。A社は2023年3月期に最高益を達成したが、本事業はさらなる成長を予測している。
■愚直に質問を重ねるしくみ 社会インフラ企業B社では、自由化によって主力事業がいずれ儲からなくなることが経営課題となっていた。そこで、主力事業以外の事業を立ち上げることを経営ビジョンとして打ち出した。 この経営ビジョンは緊張感に満ちたもので、B社の社員は自分たちの生き残りがかかっていることを理解した。しだいに新事業の提案が経営陣に示されるようになり、そこまではよかったのだが、大きな問題に直面した。
その問題は、経営陣が既存事業の経験しかなく、新事業を理解できないことだった。「おもしろそうな提案だけど、よくわからないね」という状況に陥ったのである。既存事業なら、これぐらい成功しそうだな、と経営陣が想定できるのだが、それができない。困ったB社の経営陣は、今まで以上に提案部署の意見をよく聞いてみることにした。 すると、このような会話がくり返された。 「大丈夫です」「いや、何がどう大丈夫なのかを聞いているのだが」
「がんばります」「それはそうでしょう」 「私たちのことを信じてください」「もちろん信じていますよ」 B社の経営陣は、コーポレートガバナンスの観点から、これはまずいぞ、と考えた。 そこで、B社の経営陣は、提案部署に対して、経営陣の代わりに重要仮説を質問する部隊を本社につくったのである。 「なぜこんなに儲かるんですか」 「こうならない場合はどうするのですか」 「数字もありがたいのですが、何をするのか、目に浮かぶように教えてください」