「ポスト石破」の“本命”、林官房長官の行く末 政界の119番「火消し専門」からの脱皮がカギ
■石破官邸では“外様”、「実質官房長官」は赤沢氏 加えて、「政府内でも、政策判断や各省庁の人事などでも、林氏の存在感が希薄」(同)とされる。2000年以降の自民党内閣での官房長官像を振り返ると、小泉純一郎政権での福田康夫氏や、安倍晋三政権での菅義偉氏など、「実質的に内閣の切り回し役を務めた名官房長官が存在した」(同)が、現状をみる限り「林氏は、毎日2回の定例会見でも踏み込んだ発言はほとんどなく、内政・外交分野での大きな動きに対しても『無味乾燥なコメント』でお茶を濁す場面ばかり」(官邸記者クラブ関係者)との見方が支配的だ。
旧岸田派(宏池会)ナンバー2だった林氏だが、「岸田政権下の官邸では、首相を囲む旧岸田派の側近の中の1人という位置づけで、岸田首相も林氏より木原誠二氏(現自民選対委員長)の意見を尊重していた」(同派幹部)というのが実態だった。さらに「林氏は石破政権では完全な外様で、石破首相と同じ鳥取県選出の赤沢亮正経済再生相が『実質的な官房長官役』を果たしている」(官邸筋)とみられている。 それでも林氏が「ポスト石破の本命の座」を堅持しているのは、9人もの候補が乱立した昨年9月の総裁選で、「3強」とされた石破、高市早苗、小泉進次郎の3氏に次ぐ4位に入ったことが最大の要因だ。党内保守派の代表として、石破政権での「反石破勢力の旗頭」とされる高市氏、「総裁選での不可思議な言動で、国民的人気の先細り」(自民長老)が目立つ小泉氏が、「どちらもポスト石破候補としての広がりに欠けることが、林氏の“本命説”を後押ししている」(政治ジャーナリスト)ことは否定できない。
ここにきて、林氏と極めて親しく林政権誕生を期待している複数の旧岸田派幹部からは、「夏の政治決戦までの半年間が林氏の正念場。今までの慎重居士の殻を破り、中継ぎなどではなく、ことあるごとに“大官房長官”として宰相を目指す姿勢を打ち出すことが必要」との叱咤激励が相次ぐ。ただ、自民党内では「いまだに、外相時代のビートルズ名曲の弾き語りばかりが話題になる林氏が、そう簡単に“政局の林”に変身できるはずがない」(閣僚経験者)との悲観的見方が多いのも実情だ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト