「同一人物に思えない」圧倒的な演技…“カメレオン俳優”・染谷将太が出演した漫画実写化作品を振り返る
■キャラの葛藤や怒りまで憑依させる姿に脱帽…「ホラー・サスペンス編」
ホラーテイストの作品でも染谷さんは演技力の高さを発揮し、多くのキャラクターを三次元の世界に降臨させている。 岩明均さんの人気漫画を原作に2014年に公開された『寄生獣』で染谷さんは、“パラサイト”に寄生され、人外の存在と共生を余儀なくされる主人公の高校生・泉新一に抜擢された。 映画出演のオファーをきっかけに原作漫画を読んだそうだが、とくに、主人公・新一が持つ“怒り”と“哀しみ”の感情に着目し、彼が自身に宿った“パラサイト”・ミギーとの対話を通じて成長していく様子や、不意に人間を超越した行動に出るぞっとした一面をどのように見せていくのか、試行錯誤しながら演じていたという。 CGを駆使して作られた本作において、右手に寄生したミギーが実際にいるかのように見せる演技も素晴らしかった。染谷さんは「CGなのに、ミギーが動いているのを見るとなぜか懐かしい」とのちに語っているが、撮影時、“実際はそこにいない”ミギーとの絆を演技によって観る者に感じさせるのだから恐れ入ってしまう。 また、古谷実さんの漫画を原作とした2012年の映画『ヒミズ』では、とある事件をきっかけに平凡な人生を手放し、運命に翻弄されていく主人公・住田祐一役を演じた。 住田は父親を殺害したことをきっかけに崩壊の道を突き進んでいくのだが、自身に恋心を抱いた茶沢景子に幾度となく引き留められ、光と闇の狭間で揺れ動く。 感情を爆発させ怒鳴ったり、複数人相手に暴れまわるなどなかなか過激なシーンも多い本作。染谷さんはのちのインタビューにて、「リハでは一切怒鳴ってなかったんですが、いざ撮影に入ったらああやってぶち切れることになっていきました」「基本的にカット割りがなく、シーンの頭から最後までぶっ通しで撮るから、感情が途切れないんです」と撮影秘話を明かし、監督を務めた園子温さんの現場力を称えていた。 鬼才と呼ばれる園監督の手腕はもちろんだが、自らの意志をコントロールできなくなるほどに、染谷さんは役にのめり込んでいたのだろう。その“怪演”っぷりは各所で絶賛され、染谷さんは本作で「マルチェロ・マストロヤンニ賞 (新人俳優賞)」を受賞することとなった。