明日開幕!「空のF1」に新兵器で挑む“侍パイロット”室屋の決意とは?
――去年と今年の室屋さんとの違いは? 「去年は、この新しい機体(Edge 540 V3)をぎりぎりで持ってきました。できたてのほやほやで、機のポテンシャルがよくわかっていなかったんです。後半戦から機体のポテンシャルをつかみ、冬場の改造もうまくいっているので、ずっと性能が上がっています。去年、2度の表彰台がありますが、それはラッキーでした。今年はコンスタントに実力さえ保てば、表彰台に上ることができます」 ーー昨年は、新機のテストもままならぬ状態で迎えた千葉だったと聞きます。やっと新機の性能を把握されたのですね。今回は、千葉用にさらなる改造を加えられとか? 「足(車輪)のホイルパーツ、カバーを、新設計のものに変えました。足のギアの方にまでカバーできるもので、空気抵抗が減り、だいぶ速くなると思います。まだ今は塗装も終わっていない状態(笑)。調整もギリギリです」 ―-千葉のコース設定も去年と変わったのですね? 「前回とは、まったく違うコースレイアウトになりました。前回と同じく高速型であることは変わりませんが、昨年はフラットな設定でしたが、今度は、バーティカルターン(折り返しゲートでの垂直旋回)が2回入っています。今年は、そこで差が出ます。勝負が面白くなります」 ―それは室屋さんにとってプラスなのですか? 「どっちでもありません。ただ、高速のレースの方がウイングレット勢には離されません。そこは少しいいかもしれません」 ※ウイングレットは、両翼の端につけられた小さな板のこと。ターンする際に、翼の端から翼端渦と呼ばれる空気の渦が生まれスピードを落とす原因となるが、この渦の発生を抑える効果があり、他機はウイングレットを取り付けてタイムを縮めているが、室屋さんの機は認可が下りず取り付けることができていない。 ――日本初開催の昨年の千葉大会は2日間で12万人が集まりました。以降、何かが変わりましたか? 「多くの人に知ってもらいました。聞けば、6億件くらいのリーチがあったそうなんです。“日本人がなんか空を飛んでいたよね”“なんか今までと違う航空スポーツだね”という感覚でエアレースを知ってもらい、触れてもらえた。25年間、この世界で生きてきた僕にとっては、極めて大きな瞬間でした。レースだけでなく、空を知ってもらえたことがうれしいんです」 ――空を? 今年は、もう一歩踏み込んだ世界を知って欲しいのではありませんか? 「スポーツとしてのエアレースをチームで突きつめています。なんとなく楽しいからやっているんですが、空を飛ぶモータースポーツであるという点を理解してもらえればいいですね」 ――昨年の王者、ポール・ボノムやベテランのピーター・ベネゼイらが引退しましたが、他のパイロットの経歴を見ると、元軍人や元パイロット、新鋭のドルダラーは両親が航空学校の経営者だとか。そんな中で日本人の室屋さんは、不利ではありませんか? 「基本的に全部が日本人にあっているスポーツだと思うんです。身体能力、物作りなど、細かく何かを追求することに関しては、負けるところがありません。確かに航空についてはネットワークも含めて欧米が進んでいて、そこは苦しい点ですが、日本人だからと言ってマイナス点はありません。僕みたいに体が小さい方(173センチ、73キロ)が軽いんで、逆に体の大きな海外のパイロットにメリットはないでしょう」 ――サムライとも呼ばれる日本人の精神部分の有利さは? 「どうでしょう。日本人の真面目さ、大雑把ではなく、細かさ、神経をずっと研ぎ澄ますことのできるような部分が、このスポーツには合っています。日本人が有利かもしれません」