年間6000万円を旅に使う富裕層の心を掴む、「旅行コンシェルジュ企業」
世界の富裕層が、F1グランプリのチケットやヘリコプターによる送迎、超高級ホテルのスイートルームの予約を直前に必要とした場合、最初の窓口はどこになるのだろう? 起業家のステファン・ディ・フィニーツィオは、その答えが、昨年自身が立ち上げたマイアミを拠点とするデジタルコンシェルジュ企業のThe Prelude(ザ・プレリュード)になることを期待している。 同社の初年度の売上高は2000万ドル(約32億円)に達したという。 ザ・プレリュードは、富裕層とハイエンドの旅行コンシェルジュのネットワークをつなぐマーケットプレイスという位置づけだ。「当社は、最も贅沢な旅行やエクスペリエンスのみを手配するトラベルエージェンシーのような企業です」と、ディ・フィニーツィオは述べている。 同社は、顧客に対する資格審査を特に実施していないが、年間1万5000ドル(約240万円)の会費を徴収しており、これにより、多くの顧客が排除されていることは明らかだ。ディ・フィニーツィオによると、ザ・プレリュードの平均的な顧客は、同社を通じて手配した旅行に年間約40万ドル(約6300万円)を費やす人々だという。 調査企業キャップジェミニは昨年、「居住用不動産や収集品、消費財などを除いて、100万ドル(約1億4600万円)以上の投資可能資産を所有する富裕層(HNWI: High Net Worth Individual)」が世界に約2200万人存在すると試算していた。ザ・プレリュードは、これらの裕福な経営者や企業を売却した起業家、スポーツやエンターテイメントなどの分野で活躍する有名人などの富裕層をターゲットとしている。 ディ・フィニーツィオによると、これらの顧客層に共通しているのは、デジタルとパーソナライズされたサービスの両方を求めている点だという。「当社のサービスは、古いコンシェルジュサービスとデジタルの融合です。顧客は、当社のライフスタイルマネージャーが提供する人間味のあるサービスを好みます。また、各マネージャーが担当する顧客は10人までに制限し、顧客はアプリなどのデジタルオプションからそこにアクセスできます」と彼は述べている。 2023年10月にローンチされたザ・プレリュードは、口コミや紹介を中心に急速に成長した。初年度の売上高が2000万ドル(約29億円)に達した同社は、2025年末までの1年間の売上高を3500万ドル(約55億円)と見込んでいる。 ■競合はアメックス ディ・フィニーツィオは、顧客の身元を明かさないが、これまでの利用者にプライベートジェットの予約をすべて直接行いたいと希望したラッパーや、パリのファッション・ウィークの最中に高級レストラン、LouLouのテーブルを探していた有名人が含まれていたと述べている。 ザ・プレリュードの競合には、アメリカン・エキスプレスの会員の富裕層向けに、さまざまなコンシェルジュサービスを提供するアメックス・センチュリオンなどが挙げられる。 しかし、それでもディ・フィニーツィオは、限られた顧客層向けのニッチなプロバイダーの余地があると考えている。「私たちは、何千人もの会員を抱えることのないブティック企業であり続けるつもりだ。今後もすべての顧客に対して、きめ細やかでパーソナライズされたサービスを提供し続けていく」と彼は述べている。
David Prosser