マンモス「最後の楽園」で探る4000年前の絶滅の謎
異様なまでに長い象牙、そして堂々とした体つき。マンモスは、多くの人にとって非常になじみの深い太古の大型脊椎動物だ。ティラノサウルスやステゴサウルスなどいくつかの恐竜などと同様に、絶滅した太古の生物の中では代表的存在といえるだろう。 そのマンモスだが、最後の個体が今から「わずか約4000年前」まで生存していたという事実をご存知だろうか? 約4000年前といえば、古代中国やエジプト、メソポタミアなどの初期文明がすでに誕生していた。日本史をひもとけば、各地の村落に竪穴式住居や貝塚などがみられ、土偶などがたくさんみられる縄文時代にあたる。 私が普段取り上げる古生物や化石記録のエピソードは、何千万年や何億年前という地質年代のタイムスケールだが、マンモスが生存していた時代はそのような年代とは比べものにならないほど、「非常に最近」の時代といえるだろう。我々の直接の祖先達が、マンモスと直に遭遇していたのは間違いない。 このように人類と直接関わりの深い存在であるマンモスだが、その「絶滅の原因」に関して、まだまだいくつか謎が残されている(筆者注:2017年3月に書いた「残されたゲノム・データから迫る なぜ滅びた?氷河期の盛者マンモス」の記事参照)。最後のマンモス達は、どこで、どのような原因で、姿を消したのか。その謎に迫る最新の研究について紹介したい。
マンモス最後の楽園ウランゲリ島
氷河時代にその繁栄を極めたマンモス達。その勢いは長い間続いた寒冷期のピークが去り温暖化がはじまった「最終氷期」(約11万5000年~1万1700年前)の終末を境に、下り坂をたどりはじめた。 分厚い氷河は温暖化とともにとけはじめ、海水面の上昇を世界規模で引き起こした。とけた氷河の下に、むき出しになった大地が現れ出した。マンモスは氷河地帯に留まることを好むため、その生息地域は縮小の一途をたどる。化石記録でも、マンモスの群れが北米やユーラシア大陸の北へ北へと追いやられていく様がみてとれる。 そして最近のいくつかの発見によると、マンモス最後の生き残りはシベリア北東部沖の北極海に位置する「ウランゲリ島」にいたようだ。 ウランゲリ島は、現在、ユーラシア大陸から150キロほど離れた場所に位置している。宮城県(約7282平方キロ)より少し大きいくらいの面積(7600平方キロ)だ。ホッキョクグマの繁殖地として有名で、世界遺産にも指定されている自然豊かな場所だ。 最終氷期の後、マンモス達はここウランゲリ島にたどり着き、4000年前頃まで着実に生き延び続けた。 つまり、ウランゲリ島はマンモス「最後の楽園」だったのだ。