野球の「職人」たちに学ぶ自己表現【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第128回
それゆえ、職人たちはきたるべき「好機」に向けて着々と準備と練習を続けています。守備にしろ犠打にしろ、「守って当たり前」「決めて当たり前」と思われていますから、失敗したらファンからため息が出ることも。そんな緊張した状態で成功させ続けるには、よほどの努力と精神力が必要ですよね。 職人と呼ばれるまでには、長い時間がかかります。ホームラン王と同じように、誰でもなれるものではないのです。最近、私が注目している職人はヤクルトの宮本丈選手です。 奈良学園大学からドラフト6位で入団し、プロ7年目を迎える内野手。スタメンで出ることもありますが、試合終盤に登場することも多く、代打をはじめ多くの役割を求められ、それにきっちりと応えてきました。 先日にインタビューをした際には、自分がチームで求められていることをしっかりと意識していて、その期待に応えようとする真面目な姿勢が強く印象に残りました。周囲の選手たちも、宮本選手の印象を聞くと「練習の虫」と口を揃えます。 宮本選手は、試合前の練習では特にバッティング練習にこだわり、試合に登板する可能性がある相手投手のさまざまな投げ方を打撃投手に真似てもらい、シーンを想定したバッティングやバントの練習を行なうそうです。 高校野球ではベンチで大きな声を出す子もいて、それもひとつの表現ですね。人生も野球も、自分が必要とされる方法を模索することが大切。職人と呼ばれる選手の背中からも、学ぶことが多いと思うのです。 それではまた来週。 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作