2歳女児が性被害「娘は普通の思春期を送れるのか」 京都地裁で読み上げられた母の悲痛な嘆き
2歳という低年齢の女児に性虐待をした男に懲役5年の実刑が言い渡された。「被害は一生継続する」。女児の母親は、わが子が成長するにつれて被害を知ることになるのでは、と悲痛な心情に駆られ、幼子を守ってやれなかった自責と後悔にさいなまれている。 【写真 チェックリスト全文】性的同意とは 「娘が普通の思春期を送れるのか、結婚はできるのか。不安で押しつぶされそうになる」。11月に京都地裁で開かれた公判で、母親の意見陳述書が代理人弁護士により読み上げられた。 男は母親の元交際相手で、母親宅で女児に性交しようとし、わいせつ行為に及んでいた。陳述内容によると、後日、母親が男のスマートフォンを見た際に娘が性被害に遭っている動画が保存されていることに気づき、すぐに警察へ申告した。女児は太陽のような笑顔にあふれ、絵本と歌が大好きな普通の女の子だった。男を「パパ」と呼んでいたが、事件後は「嫌い」と言うようになった。心理療法に通わせているが、「いつまで通えばいいのか」と母親の不安は尽きない。 男は公判で就寝中の女児に犯行に及んだことについて、「記憶が残らないようにした」と釈明した。性被害者の支援に携わる上智大の齋藤梓准教授(臨床心理学)は、「記憶に残らなければ性的に扱ってよいかのような考え方だ。子どもに対する著しい人権侵害であり、極めて悪質」と厳しく非難する。 齋藤准教授によると、成長過程で受けた性被害は、一般的に3歳未満なら成長すると記憶がなくなる場合が多いが、個人差もあると考えられる。また、年齢を重ねて何らかの形で被害を知った時に自尊心が傷ついたり、自分を異質な存在と感じたりする恐れがあるという。「親が不安に感じた時に相談する相手がいること、子どもが困った時に親にSOSを出せる関係性を築くことが望ましい。まず今は、親が落ち着いて子どもに接することができるよう親へのケアが重要になる」と助言する。 陳述内容によると、母親は娘の被害に気づけなかった自身を責め、不眠に陥り、自殺さえ考えたという。齋藤准教授は「被害を防げなかったのは親の責任ではない。周囲は『なぜ気付けなかったの』と言うのではなく、加害者が悪かったという点を認識すべきだ」と強調する。