「どん詰まりの映像業者としてのリアリティが…」ドラマ『フィクショナル』がBLとフェイクニュースを描いた理由【映画館上映も決定】
映画館上映も決定した話題のドラマ
今年の10月1日にテレビ東京で地上波版の放送も始まり、K2や新文芸坐などの劇場での上映も決まったドラマ『フィクショナル』。清水尚弥と木村文が主演を務め、「BL(ボーイズラブ)」と「フェイクニュース」という異色のテーマが注目されている。地上波に先駆けて動画プラットフォーム BUMPで先行配信され話題を呼んだ。 【画像】酒井善三監督(左)と、大森時生さん(右)。 憧れだった先輩から映像編集の仕事を頼まれたことで、とある騒動に巻き込まれていく青年を描いた本作。手がけたのは、『TXQ FICTION/イシナガキクエを探しています』などを生んだテレビ東京の人気プロデューサー・大森時生さん、そして短編映画『カウンセラー』でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭 SKIPシティアワードを受賞し、黒沢清監督も「今一番注目し、影響も受けた」と名前を挙げる映画監督・酒井善三さんだ。 『フィクショナル』の仕掛け人であるお二人に番組のコンセプトや制作に到るまでの裏話などを聞いた。
酒井監督の持ち味を生かすためにあえて選んだ“分業スタイル”
――今回の『フィクショナル』では、大森さんがこれまでとは異なる制作体制で臨んだと伺っています。 大森 これまではSIX HACKのように、フェイクドキュメントの形式で制作したものの一部にドラマが挟まってくるというかたちで、酒井監督とご一緒していました。その中でがっつり酒井監督とひとつのフィクションを作り上げたいと思うようになりました。 ――その判断の裏にはどういう想いがあったのですか。 大森 酒井監督には私がプロデュースを務めた多くの作品で監督をしていただきましたが、一人の酒井善三ファン目線で見ると「酒井監督が得意なテイストの作品」とはまた違ったのかなとも常々感じていました。酒井監督の本分は劇映画であり、ドラマチックな切り返しのカメラワークといった映画的演出が光る方です。それを活かせるのはやはりドラマであり、映画であり、つまり完全なるフィクション=物語ではないかと思いました。 ――酒井監督としては今回の抜擢はどうでしたか。 酒井 大森さんとの仕事で『Aマッソライブ 滑稽』以後、担当の部分に関しては「脚本段階からこちらでやらせてください」と、設定と落としどころの共通イメージは打ち合わせた上で、ある程度自由にはやらせてもらっていました。ただ、せっかくならオリジナルのドラマか映画をやってみたいですねというお話はずっとしていたので、今回はその念願がようやく叶いました。