三陸の復興に立ちはだかる韓国の水産物禁輸 このままでは壊滅的打撃も
韓国の日本産水産物の輸入規制をめぐり、政府は20日、世界貿易機関(WTO)への提訴に向けた二国間交渉の期限を迎える。韓国の輸入規制強化後、日本から韓国への水産物輸出は大きく減少したが、これから大打撃を受けると予想されているのが宮城県産の「ホヤ」だ。宮城県産のホヤは東日本大震災前は8割が韓国に輸出されていたためで、震災の壊滅的被害からようやく生産量が回復してきた矢先、今度は最大の消費先の韓国による禁輸に直面しているのだ。政府は20日までに韓国側から輸入規制解除が行われない場合、韓国をWTOに提訴する方針だが、最終判決が来年のホヤの出荷に間に合うかは厳しい見通しだ。
津波で大きな被害を受けた、三陸の特産品のホヤ
ホヤは、東北の珍味として知られ、関東から東北にかけて根強い人気がある水産物だ。その見た目から「海のパイナップル」とも呼ばれ、生のまま刺身や酢の物にしたり、干物、塩辛などに加工して消費される。主な生産地は、岩手県宮古市付近から宮城県金華山に至るまでの三陸海岸で、特に宮城県が生産量の9割近くを占めていた。震災前の宮城県内のホヤの生産量は1万6千トンだったが、震災による津波で、県内のホヤはほぼ全滅した。 宮城県漁協の阿部誠理事(59)は、宮城県産のホヤの生産は「ようやく国内消費を賄えるくらいまで回復した」と話す。ホヤは、出荷できるようになるまで3年から4年かかる。生産者は震災後に養殖施設を再建し、昨年初めて3年もののホヤ4千トンを、国内向けに出荷することができた。今年は3年ものと4年もののホヤを合わせて、震災前の約4割となる6千トンが出荷出来る見込みだ。ホヤは3月から7月が旬で、今が出荷の最盛期を迎える。
韓国への輸出が8割、禁輸で大打撃「収入半減も」
震災前、身が大きく味が良い宮城県産のホヤは韓国で人気が高く、全生産量の7~8割が韓国に輸出されていたという。阿部理事によれば、いま海の中に、来年に向けて養殖中のホヤが1万2千トンある。「このまま韓国の禁輸が続けば、来年は国内だけでは消費しきれず、価格が大暴落する」と、阿部理事は危惧する。収入が半減し、価格を維持するために廃棄処分も検討せざるを得なくなる生産者も出てくるという。韓国が宮城県などから生産される水産物の全面禁輸を決めたのは、2013年9月。出荷するまで3、4年かかるホヤの生産量を、禁輸に合わせて調整することはできなかった。 県漁協では、県議会議員や水産庁、外務省、韓国領事館などあらゆるチャンネルを通じて、韓国に禁輸解除を働きかけてきた。阿部理事によれば、韓国の消費者にも味の良い日本のホヤを食べたいという声は大きく、「なぜ禁輸が解除されないのか不思議でならない」と言う。韓国の禁輸が続く中、漁協では国内での販路拡大やシンガポールにも輸出を図るなど、ホヤの消費量を増やそうと躍起になっている。阿部理事は「韓国は、科学的根拠に基づかない禁輸をやめて欲しい。一刻も早い禁輸解除を熱望している」と語気を強める。