大雨被害乗り越え再び開業 「地域医療を停滞させないために」閉院した秋田市のクリニックが復活 止水板備えるなど水害対策も強化
2023年7月の記録的大雨でMRIなどの医療機器が水に漬かり、閉院を余儀なくされた秋田市の病院が別の場所に移転して再び開業した。閉院から約1年。地域医療を守り、つないでいくために新たなスタートを決意した医師の思いとは。 【画像】床上30cmまで水が…壊れてしまった医療機器
医療機器が泥だらけに
12月19日、秋田市広面に「秋田メモリアル・わたなべクリニック」が開業した。この病院の前身は、秋田市南通にあった「秋田メモリアルクリニック」だ。秋田メモリアルクリニックは、2023年7月の記録的大雨で床上30cmまで水に漬かり、建物のほか2台のMRIとCT、レントゲン装置などが被害を受けた。 この病院で約26年にわたり診療を続けてきたのが、脳神経外科が専門の渡邉克夫さんだった。新たに開業した秋田メモリアル・わたなべクリニックの院長を務める渡邉さんは、大雨被害を振り返り、「おそらく水が引いてもすぐに診療できないということは想像できた。次の日に水が引いたが、泥だらけで機械も駄目になっていて、本当に予想もしていなかったことなのでぼうぜんとした」と当時の心境を語った。
再び開業を決意
復旧費用は医療機器だけで4~5億円かかると見込まれ、2023年12月にやむを得ず閉院に至った。一時は医療の現場からも離れようとした渡邉院長。しかし、「総合病院の外来で2カ月待ちのMRI検査が、うちのクリニックの2台がなくなったら4カ月待ちになった」という話があちこちから聞こえてきたという。 そして「前のクリニックで26年近くMRIを扱ってきたので、そういうことができる人が限られると思えば、僕らがもう一回やらなきゃいけないかな」と再び開業を決意した。「地域医療を停滞させてはいけない」と、渡邉院長は民間の協力を得ながら1年かけて開業にこぎ着けた。
MRIは当日対応も可能
大雨を教訓に、新たなクリニックは医療機器のケーブルを天井に回したほか、検査室への浸水を防ぐために高さ50cmの止水板を設置できるようにした。 MRIは事前予約だけでなく当日も対応可能で、必要なときに迅速に検査が受けられる。1日に約40人の撮影ができるという。 渡邉院長は、「すぐ検査することが医療の中ではかなり重要だと思うので、すぐ検査できる体制を提供したいのが一番。肉体的に以前ほどではないが、頑張れるだけ頑張って地域医療に役立てればと思う」と力を込めた。 (秋田テレビ)
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