透明人間にされても「私はここにいる」 在留資格を失った中東出身、女子高生が伝える苦しみ
●「私にも命があります」「私の未来を返してください」
日本で義務教育を終えたアズさんは現在、高校に通っている。やりたいこともたくさんあるし、将来は保育士になりたいという夢もある。だが、仮放免のままでは先行きの計画を立てることは容易ではない。そんな状況の中で大きな支えになっているのが、弁護士や支援者の存在だという。 「弁護士や支援者の人たちは、入管に存在を奪われた私たちのことをわかってくれる人。それだけじゃなくて、助けになる道を教えてくれる人です。『仮放免高校生奨学金プロジェクト』(*2)にも応募しようと思っていたけれど、この作文も支援者に声をかけてもらわなければ、書く機会がなかったかもしれません」 自分の書いた作文が絵本になったことを両親はどう思っているか――。この問いにアズさんは「うれしいだろうけれど……。でも、本名を出していないので、自分の娘が書いたのか、という感じもあるみたいです」と答える。 他の高校生のようにアルバイトや、推し活をできないだけでなく、一部の人々が外国人に向けるヘイトによって、人権を侵害されかねない。幼い頃に来日し、日本で教育を受け、母国には帰る場所がないにも関わらず、アズさんたちはそんな苦しい状況に置かれている。 アズさん一家は、あらためて在留特別許可を求めて、入管に申請している。 「私にも命があります。ちゃんとした人間として生きるためには、誰でも居場所と基本的人権が必要です。私の未来を返してください。入管に言いたいのはそれだけです」 【プロフィール】アズ・ブローマ/自国で迫害を受ける危険を逃れ、5歳半で家族とともに来日。難民認定されず、来日9年目に在留資格を失い、仮放免になっている。2024年9月現在、高校2年生。 (*1)「入管を変える! 弁護士ネットワーク」。在留資格のない人々の問題に取り組む弁護士のネットワーク。入管の制度や運用、その背景にある社会意識の改善を目指している。 (*2)親が就労を禁止され、経済的に厳しい状況に置かれているにも関わらず、高校からは就学支援の対象から外されてしまう仮放免の子どもたち。彼(女)らに毎月、公立高校の授業費に相当する1万円を給付する、反貧困ネットワークと移住連による共同プロジェクト。