透明人間にされても「私はここにいる」 在留資格を失った中東出身、女子高生が伝える苦しみ
●在特が出た家族に「仮放免中は日本にいなかったことにして」と伝える市の職員
日本の子どもたちと変わりなく小中学校で学び、遊んできたアズさん。だが、絵本にも描かれているが、彼女が来日して9年目に一家全員が在留資格を失い「仮放免」という立場にされた。 仮放免の状況に置かれた外国人は、健康保険に加入することも就労することもできず、入管が許可しなければ、住んでいる都道府県の外に出ることもできない。住民登録ができないため、行政に関わるサービスもほぼ受けることもできない。 「ある日、入管に居場所を奪われて、『あなたはここにいないよ、見えないよ』と、突然、透明人間にされてしまった。一言でいえば、そういうことです」 幼い頃から日本社会や日本の大人たちを見てきたアズさんは、外国人に対する日本の本音と建て前も肌で感じている。 「仮放免の外国人は、入管から仕事をしていいとかダメとか決められる立場にいます。でも、外国人は、日本人がやりたがらない仕事をしていたりするので、もしそういう職場で働いている外国人が全員いなくなれば、その職場は成り立たないでしょう。それなのに、日本の政府はどうして外国人から在留資格を奪い、働くなと言って、居場所を奪うのでしょうか」 2023年6月、国会で成立した改正入管法は、今年6月に施行された。この間、2023年8月、当時の法務大臣は仮放免の子どもたち(とその親)に、一定条件のもとで在留特別許可(在特)を与える方針を発表している。 しかし、ほぼ同じ境遇でありながら、在留資格が出た家庭がある一方で、出ていない家庭もある。国のこの方針は、当事者のあいだに軋轢を生みかねない残酷な線引きをしている。 今年は8月2日から4日まで開催された「仮放免の子どもたちによる絵画作文展」にも、アズさんは作文を出している。作文には、在特が出た家族に「仮放免中は日本にいなかったことにしてください」と市の職員が伝えるのを聞いてびっくりしたこと、在特が出た家族が役所で手続きをするためアズさんが通訳として同行したことなどが記されている。