年金月14万円の65歳男性、テレビに向かって思わず「羨ましい」…増える〈高齢者の生活保護受給〉に恨み節【CFPの助言】
「保険」や「国の制度」を上手に活用したAさん
こうした対策に、たくさんのお金がかかったことはいうまでもありませんが、Aさんは、保険や自治体の制度を上手に活用しました。 病院への支払いは、後期高齢者医療制度の高額療養費や、父の終身保険(死亡保険金は1,000万円で、保険料はすでに支払い済み)の医療特約の入院、手術給付金によってほとんど完了している状況です。 また、自宅の改築も、介護保険と自治体の「住宅リフォーム支援制度」によって、それぞれ20万円ずつ補助を受けられたため※、かかった約200万円のうちAさんの負担は約162万円となりました。この費用は、Aさんが自身の貯蓄から支払いました。 ※ 手すりの取り付けや段差の解消など、介護に必要な住宅改修を行った場合、「介護保険」を利用して費用負担を減らすことができる。ただし、20万円の限度額が定められており、今回のケースでは父は1割負担だったため、20万円補助のうち1割負担→18万円が負担軽減されたことになる。 そのほか、入院中に細々した支払いがあり、父の貯蓄は5~60万円ほど減ったそうです。
退院後の父の「ケアプラン」通りでの介護費用
ケアマネージャーが作成した退院後の父のケアプランでは、週2回のペースでデイケア(通所リハビリテーション)に通うことになっていました。なお、デイケアのない日は、Aさんや母が介護を担います。 要介護度2の場合、在宅介護サービスの利用限度額は毎月19万7,050円で、父の場合はその1割の1万9,705円が自己負担額になります。 しかし、実際にこのケアプランを実行したところ、毎月の費用は約6万円※でした。これは、利用する介護サービスの支払限度額を超える分は「全額自己負担」となるためです。 ※「要介護度2」の月額費用平均(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は6万6,000円(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度より)
「老老介護」を実感…心身限界のなか目に飛び込んできた「ニュース」
それから3年が経ち、Aさんは現在65歳、父は90歳、母は87歳になりました。 父はなんとか自分の足で歩けるようにとリハビリに励んでいますが、外出時は必ずAさんかヘルパーが付き添い、車椅子が手放せなくなっています。 また自宅での入浴や着替えなど日常生活にも介護が必要になり、要介護度も「3」に上がり、介護費用の負担も増えました。 現在のAさんと両親の収入と貯蓄は次のとおりです。 父の介護費用は父の年金からまかない、また3人の生活費は、菜園で収穫する野菜などを活用しながら、なんとか貯蓄を取り崩すことなく生活できています。 しかし、Aさんは65歳。父を自宅で介護するには、体力的にも精神的にも限界が来ています。「これが『老老介護』か……しんどいな」。Aさんは、自宅付近で父が入居できるような介護施設を調べてみました。すると、入居一時金は50万円前後、毎月の費用は15~20万円かかる施設が多いようです。いまより2倍~3倍のお金がかかります。 父を介護施設に入れたいものの、高齢の母も心配であるほか、自分自身の老後資金も残しておきたいAさん。「お金がいくらあっても足りないや。どうしたらいいのだろう……?」 それからAさんは、毎日のようにお金をどうするか考えあぐねていました。そんなある日の朝のことです。テレビで、「高齢者の生活保護受給が増えている」というニュースを目にしました。 「生活保護を受ければ、介護が必要になってもお金を気にせず生活できるってこと? これまで真面目に生きてきた自分はこんなに苦労しているのに……羨ましい」。Aさんは思わずひとり言をこぼします。 今後の資金繰りについて誰かに相談したいと思ったAさんは、知り合いである筆者のFP事務所を訪ねることにしました。