ロシア、北朝鮮への制裁「まだやるべきこと多い」 英王立研のキーティンジ金融安保部長
ウクライナを侵略するロシアへの制裁について、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のトム・キーティンジ金融安保部長が産経新聞のインタビューに応じた。キーティンジ氏は、ロシアと取引する第三国企業への制裁拡大(二次制裁)など、やるべきことはまだ多くあると指摘。ロシアと北朝鮮の軍事協力に強い懸念を示したほか、米国で来年1月20日に就任するトランプ次期大統領が制裁を有効活用することに期待を寄せた。 「しばしば誤解されているが、制裁は長期戦だ。露経済は制裁で苦境に立たされているが、崩壊するほどかといえば、そうではない」 キーティンジ氏は現状をこう分析した上で、ロシア産石油・天然ガスをインドや中国が輸入し続けているなど「抜け穴」が多数あると指摘。国際決済ネットワーク「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からまだ排除されていない露金融機関があるとも述べた。 「制裁が最大の効果を発揮するのは全ての国が参加するときだ」。キーティンジ氏は「露産石油・天然ガスの購入をできるだけゼロに近づけるためのタイムテーブル」を各国がつくるよう促すべきだと訴えた。ロシアが制裁逃れに利用している無保険の闇タンカー(「影の船団」)の対策も急務だと述べた。 米国は昨年12月、露軍需産業と取引する第三国金融機関に「二次制裁」を発動し、制裁対象となることを警戒する中国の銀行などがロシアとの取引を手控えた。こうして制裁に「超領域性」をもたせることが重要だとキーティンジ氏はいう。 北朝鮮がロシア派兵の見返りに軍事技術を得る可能性を「きわめて危惧している」と表明。「ロシアの行動は国連安全保障理事会の対北制裁決議に違反していること」を忘れるべきでなく、二次制裁などによる制裁最大化が急がれると述べた。 トランプ氏については「米国人にとって良い取引をするための手段として制裁をとらえている」と指摘。米国は石油・天然ガス輸出国であるため、露石油産業に重い制裁を科したり、露産石油を購入するインドに制裁をちらつかせたりするシナリオがあり得ると述べた。 過去に制裁が成果を出したケースとしては2015年のイラン核合意があるという。「イラン産石油を標的としたきわめて厳しい制裁」がイランを交渉に引っ張り出したのであり、そうしたモデルをロシアにもつくらねばならないとキーティンジ氏は語った。(岡田美月)