「今後も連鎖する恐れも」相次ぐ“無差別”事件…背景は 中国・車暴走で35人死亡
■警察発表で“消えた文言”
李志善記者 「中国の検索エンジンを使って『社会への報復』と検索すると、今回の珠海の事件の直後から急激に検索量が増えていて、社会の関心の高さがうかがえます」 また、今回の暴走事件では、動機について警察の発表が変わりました。 李志善記者 「事件についての警察の発表文です。最初のものと今のものを見比べると、当初は容疑者が離婚後の財産分与のトラブルで裁判を申し立て、その結果に不服だったと書かれています。しかし今のものでは、その部分がすっぽりと抜けてしまっています」 「裁判所への不満」という部分が消えていました。ただ、男は意識不明の状態です。変更の理由は発表されていません。動機は個人的な理由によるもの、という意図があるのでしょうか。 そして、事件現場でも変化が…。 「午前中にはあったんですけど献花がなくなっています。午後3時なんですけども、献花されていた場所には花がありません。会場周辺は午前中よりもかなり警備が厳しくなっています」 中国政府は、異例の対応を行いました。 CCTVキャスター 「事件発生後、習近平国家主席は非常に注目し重要な指示を出した。重要指示をもとに中央(政府)はすでにチームを派遣し、処理業務を指導するため現地に駆け付けさせた」
■習氏の“重要指示”その意図は?
中国で市民が犠牲になる殺傷事件が相次ぐなかで起きた今回の事件では、習近平国家主席自ら「リスク管理を強化し、極端な事件の発生を厳しく防ぐ」などとする“重要指示”を出しています。背景には何があったのでしょうか。 現代中国に詳しい、東京大学大学院の阿古智子教授によると“重要指示”は異例だということです。 東京大学大学院 阿古智子教授 「今回は人目の多い都市部で発生し、SNSで拡散され、政府はうやむやにできず“仕方なく”指示を出したのではないか。また、容疑者の動機が早々と公表されたのは、政権側に“市民の疑いや混乱”を収める狙いがあったのではないか」 (Q.なぜ混乱を恐れるのでしょうか) 東京大学大学院 阿古智子教授 「そもそも習近平政権の最重要課題は『社会の安定と維持』だが、国が安全を守れないとなると、習近平体制を脅かす事態につながりかねない」 (Q.中国は自由にモノを言えない一方で、治安は一定程度、安定している印象でしたが) 東京大学大学院 阿古智子教授 「習近平政権は監視カメラを設置して顔認証し、犯罪発生リスクを減らすことで、社会の安定維持を図ってきた。一方で、中国では経済不況が続き、弱い立場の人がさらに追い詰められる事態になっている。しかし、声を上げようにも言論統制され、政府も聞こうとしない。抑圧され、増大した“憎しみ”“怒り”その『はけ口』が弱者=市民に向かっている。今後も無差別事件は連鎖する恐れがある」 阿古教授は、30年以上中国を見てきた研究者として、こう話します。 東京大学大学院 阿古智子教授 「実感として、心の問題を抱える人や自殺者が増えていると感じる。今の中国では、社会の“閉塞感”が広がっているのでは」
テレビ朝日