『フォールガイ』デヴィッド・リーチ監督が挑んだ、昔ながらのアクション復活と再発明「スタントの芸術性を讃えたい」
劇中に登場する規格外のアクションは、スタントマンが実際に体を張って撮影されたものだ。昨今のハリウッド大作では、危険なスタントは視覚効果を駆使して映像化されることも多い。リーチ監督は、昔ながらの忠実なアクションを観客に届けることにこだわり、CGIの使用を極力抑えて撮影に臨んだ。 「僕はスタッフにも命じていた。スタジオに企画を売り込んだ時でさえ、『これはスタントマンについての映画なので、昔ながらの現場でのスタントをいくつか実行したい』『その芸術性を讃えたい、本気でやったものが見たい』と考えていた。昔ながらのアクションを復活させ、それらを再発明することをやりたかったんだ」
スタントマンへの愛はエンドクレジットにも表れており、本作のアクションシーンの舞台裏を収めたメイキング映像が上映される。リーチ監督は「名もなきヒーローたちのスタントを賞賛するもの」だと演出の狙いを明かし、「それらのシーンにはいろいろなやり方がある。ほとんど視覚効果でやることもできるし、スタントをたくさん使うこともできる。僕たちはただ、自分たちが言っていることにお金を注ぎ込んでいるのを、人々に見せたかった。この作品での僕らのアプローチは、『(アクションは)現場でやる』ということなんだ」と強調した。
リーチ監督が映画監督の道を歩むうえで、スタントマン時代の経験は「必要不可欠なものだった」という。「映画学校を出ていたら、僕は今のような監督になることはできなかったと思う。舞台裏やビロウ・ザ・ライン(スタッフ)で働きながら、僕自身が30年間スタント部門のトップとしてすべての部門と仕事をしてきた豊富な知識と経験が、映画がどのように作られ、すべての部門に何をするように伝えるかについての豊富な知識をもたらしてくれた。なぜなら、僕は多くの監督からそういうことを頼まれてきたからだ」 「だから、僕がお願いする時は『僕はあなたに何をしてほしいかわかっているけれど、あなたには僕を手助けしてもらわないといけない』と言うんだ。あるいは、些細なことだから、彼らには(何も)頼まず『もっと大局的なことに集中しよう』みたいになるんだ」と続けたリーチ監督。「僕が映画作りに関して持っている知識は、多くのフィルムメイカーたちが持っていないユニークなものなんだ」と自信をのぞかせていた。(編集部・倉本拓弥)