「激務のわりに特別給料が高くもない」「育てるのに10年かかる」...《20年後に消化器外科医が半減》医療崩壊を防ぐために「今すぐやるべきこと」
緊急手術に対するインセンティブ
医学生や研修医が消化器外科医を目指すようにするために、日本消化器外科学会は「責任や負担の大きさに見合った適正な報酬が得られる、消化器外科医の待遇改善とインセンティブの付与について、ぜひ、国民の皆様のご理解と、世論の後押しをお願いいたします」と提言している。 インセンティブの付与とは、緊急手術や予定手術に対する成功報酬のことを指す。欧米などでは、患者の生命に関わる手術を行なう医師への対価は、市場原理で設定されている。 一方、日本では、休日・深夜・時間外の緊急手術に対して、保険診察上一定の加算が付くことになっているものの、多くは病院の収入増や赤字補填に使われて、実際に手術を行なった消化器外科医に正当な対価が支払われていない現状があるという。 中山氏も緊急手術や高度な手術に対するインセンティブについて、賛意を示す。 「医学生や研修医にとって、現状の消化器外科は、他の科と比べて割に合わないと思われています。消化器外科は科としての魅力はあるので、業務時間の改善をするだけで志望する人は増えるかもしれませんが、特別なインセンティブを付けることも賛成です」
一番の要望は「賃金の改善」
「医師の働き方改革」導入直前に、日本消化器外科学会ワーク・イン・ライフ委員会が、労働環境の状況や改善への取り組み、会員の意識を明らかにする目的で会員を対象に行なったアンケート(2932名が回答、対象者全体の18.6%)によると、会員の要望で最も多かったのは「賃金の改善」だった。手術技術料としてのインセンティブの導入を望む声も多かった。 「現在の勤務状況で最も不満に思うこと」という設問に対しては、「給与」と回答した人が44.3%と最も多く、労働環境だけでなく、基本給与の向上も喫緊の課題だ。 また、「後輩などに消化器外科医になることを勧めるか」という設問に対しては「勧める」が38.2%、「自分の子供(など身近な存在)に消化器外科医の道を勧めるか」についても、「勧める」がわずか14%という結果になっている。 人々の生死に直結するがんや、腹膜炎、腸閉塞などの疾患に対する消化器外科診療は、市民が安全、安心に暮らしていくためには決して欠かすことができないものだ。 消化器外科医が不足し、手術ができないという最悪の事態を防ぐためにも、働きやすい労働環境の整備に加えて、給与面の待遇改善などの対策を国レベルでも行なっていくべきだろう。 ・・・・・ 【つづきを読む】「人として最低限のルールさえ…」なぜ『脳外科医 竹田くん』モデルは医師を続けられるのか? 吹田徳洲会病院の院長が語った「驚愕の言い分」
週刊現代(講談社)
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