現金配布に有権者失望「誰を信じていいか」 亀岡元衆院議員書類送検
当選5回の元国会議員に、捜査の手が伸びた。公選法違反の疑いで26日に書類送検された亀岡偉民元衆院議員(69)。報道が出てから本人が公の場で説明することはなく、関係者には「なぜ」という戸惑いが広がる。複数の関係者は亀岡元議員が現金を配っていたことを証言。「政治とカネ」の問題を巡り、県民の政治不信は強まる。 福島市にある亀岡元議員の後援会事務所は同日、人の出入りはほとんどなく、報道陣の取材に応じた事務所関係者は「(書類送検は)寝耳に水。亀岡氏からの指示を待っている」と話した。
関係者によると、今回の衆院選から福島1区に加わった二本松市の祭り事務所には10月上旬の祭り初日に、亀岡元議員が1万円の入った本人名義ののし袋を持参。領収書を受け取って帰った。翌日には秘書とみられる男性が事務所を訪れ「昨日持参したのし袋を交換してほしい」と依頼。亀岡元議員名義ののし袋を回収し、持参した亀岡元議員が所属する「福島メセナ協議会」名義ののし袋と交換、領収書の宛名も変更してもらったという。 福島市の祭りでは、開催数日前に亀岡元議員が町内会関係者を訪ね、現金1万円が入った本人名義の封筒を渡してきた。封筒には「会費」と書いてあった。この町内会の男性は「お祝い名目であればすぐに公選法違反だと分かって断るが、会費名目だった。後で『これ大丈夫なのか』と話題になったが、渡されたらその場で返すわけにもいかない」と困惑した表情を浮かべる。 一方、寄付とみられる申し出を断った団体もあった。福島市のある町会長は、亀岡元議員の関係者が福島メセナ協議会を名乗って町会長に封筒を差し出してきたが「町会は政治と関わらない。『いろいろな考えの人がいるので受け取らないことにしている』と言って断った」と振り返った。 選挙区内の有権者からは怒りや失望の声が上がった。伊達市の会社員男性(49)は「衆院選は裏金問題で自民党にとって厳しい選挙となったが、ますます疑いの目で見てしまう。(党県連が)事実確認して、早急に謝ることが大事だ」と話す。 福島市のパート従業員女性(65)は「そういう(寄付行為)手段を使わなければ当選できないのか」とあきれ顔。同市の40代主婦は「政治家以前に、人としてどうなのか。誰を信じ、誰を選ぶべきか分からなくなり、投票もしたくない」と語気を強めた。 報道各社は26日、合同で亀岡元議員に会見などで取材に応じることや声明を出すことを申し入れたが、事務所は「本人に連絡がつかない」として、期限までに返答はなかった。