50㏄クラスのレーサーレプリカ、その先陣を切ったスズキ|SUZUKI GAG|ハチマルモト
80年代と言えば、レーサーレプリカが続々とデビューして一大ブームとなった時代だ。スズキのRG250γ(ガンマ)を皮切りに、ホンダはNSやCBR、ヤマハはTZR&FZRをリリース。さらに、ワールドGPレーサー直系とも言える2ストローク500㏄も登場し、レーサーレプリカ戦国時代へ突入していった。 【画像11枚】存在自体がアメージング空前絶後のコミカル系ミニレプリカ そんな時代に、異例の50㏄レプリカとしてデビューしたのがスズキGAG(ギャグ)である。名前だけ聞けばイロモノ的なバイクに思えるが、姿カタチはれっきとしたレーサーレプリカ。GSX-Rシリーズそっくりの風ぼうで、エンジンまで覆われたフルカウルやシングルシートカウル、アルミサイレンサー風マフラーなど、兄貴分をそのままスケールダウンさせたルックスだ。カラーリングも特徴的で、「スズキがキャスティングした」とうたう4色はGSX-Rそっくりのレプリカキャラクター、戦闘機をイメージしたバトルプレーンキャラクター、車名ロゴを大胆にあしらったポップアートキャラクター、コミカルで可愛らしいピンクスキャラクターと、遊び心満点のバリエーションだった。 ヤマハYSR50やホンダNSR50に先行したミニレーサーレプリカの先駆者 フレームや足まわりも本格的だ。高剛性のダブルバックボーンフレームを採用し、フロントにはディスクブレーキを装備。サスペンションは、セリアニータイプのフロントフォークとシングルダンパーリアサスペンションという組み合わせだ。 そしてエンジンは、同社のビジネスバイク「バーディー」の空冷4ストロークを流用。 2ストローク主流の時代に非力感は否めなかったが、リターン式4速トランスミッションと組み合わせることで121㎞/リッターという燃費性能を実現した。 このように、見た目も中身も本格的なGAGだが、そのサイズはGSX-R750とは比べ物にならないほど小さく、250㏄と比較してもひと回りもふた回りも小さい。 しかしワンメイクレースが行われ、あのヨシムラからもチューニングパーツがリリースされるほどホットなモデルだったのだ。 ただしその後、ヤマハがYSR50を発売し、それを追うようにホンダがNSR50をリリース。2ストロークエンジン搭載の両者はGAGよりもパワフルで、総合的な運動性能も上回った。 そして間もなくして、人気も奪われてしまったのである。 しかしGAGの存在がなかったら、このクラスがこれほど盛り上がらなかったことは間違いない。 GAGはミニレーサーレプリカの開拓者として、今でもたたえられている。 主要諸元 SPECIFICATIONS SUZUKI GAG 全長×全幅×全高(㎜) 1540×610×870 シート高(㎜) 610 車両重量(㎏) 64 エンジン形式 4サイクル・単気筒 排気量(㏄) 49 最高出力(ps/rpm) 5.2/7000 最大トルク(㎏-m/rpm) 0.57/6000 変速機 常時噛合式4段リターン タイヤサイズ 3.50-10-2PR(前後とも) ブレーキ前/後 ディスク/リーディングトレーリング 燃料タンク容量(リッター) 7.0 発売当時価格 18万3000円 初出:ハチマルヒーロー vol.47 2018年 5月号 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部