知的障がいのある球児たちが甲子園を目指す!「野球できる場所がずっとなかった…」難病と闘う青年の挑戦《青鳥特別支援学校・野球部》
2023年5月、とある高校の高野連加盟が承認された。東京・世田谷区にある、知的障がいのある子どもたちが通う「青鳥特別支援学校」だ。昨年、「障がいのある子どもに硬式野球は危険ではないか」との声を乗り越え、複数の学校からなる連合チームの一員として初めて公式戦に出場。今年の7月7日には、単独チームとして西東京大会で初陣を飾る。特別支援学校の野球部が単独チームとして出場するのは、100年を超える高校野球の歴史の中でも史上初の快挙だ。 【マンガ】PL学園・野球部の「ヤバすぎる3年間」で僕が学んだこと 彼らにとって、高校野球に挑戦する意味とは?野球部のキャプテンを務める白子悠樹くんが、2022年に念願だった野球部員として入部したときの様子を『待ってろ!甲子園』(ポプラ社)から一部抜粋してお届けします。
難病と闘うキャプテン・白子悠樹くん
新入部員のひとり、白子悠樹くんは大の野球好きだ。5歳くらいのころ、親に連れられ、プロ野球・東京ヤクルトスワローズの試合を生で観戦したことが野球との出会いだった。それから「自分でも野球をやってみたい!」という気持ちが芽生えたが、青鳥特支に入るまで、白子くん自身が野球をすることはなかった。 白子くんは、生まれた直後から足に変形の症状が見られた。詳しく調べてみると、「シャルコー・マリー・トゥース病」とよばれる難病であることがわかった。手足の先のほうの筋力や感覚がゆっくりと低下していくことが主な症状で、今のところ明確な治療法は見つかっていない。白子くんもやはり手足の筋力が人より弱い。また、病気の影響で、手足以外にも筋肉の変形が見られることから、ずんぐりとした独特な体形をしている。そのため体を自由に動かすことが難しく、素早い動きをするのも苦手だ。 定期的に病院に通っているが、検査のたびに筋力などの数値が悪くなっていくため、白子くんの両親は、担当の医師からこんなふうに言われてきた。 「このままでは、いつかは歩けなくなって、車いす生活になるかもしれない。覚悟をしておくように」 そうした障がいがあるせいか、幼いころの白子くんは決して前に出たがらず、誰かの背後にすっと隠れることが多かった。そんな白子くんが、野球の話になったときは目を輝かせた。白子くんの父・修さんが言う。 「悠樹は、ヤクルトの本拠地・神宮球場に試合を見に行ったときから野球が大好きになりましてね。実を言うとぼくはもともと阪神タイガースのファンだったんですけど、気がつけば悠樹といっしょになってヤクルトを応援するようになりました。観戦には何度も行きましたよ」