羊宮妃那が紡ぐ優しさの連鎖「誰かを温かく包み込めるような人でありたい」
■羊宮妃那が紡ぐ優しさの連鎖
――「小市民」を目指す小佐内たちですが、羊宮さんが憧れる人間像や生き方はありますか? 羊宮:あります! 私は“カッコいい人”であり続けたいと思っていて、それにはさまざまな意味合いがあるのですが、先ほどのラジオを例にすると、番組を通じて“優しさを共有できる人”でありたいと思っているんです。 人から優しい言葉をかけられたり、何かをしてもらったりすると、自分もそうありたいと思えますし、今度はその優しさをほかの人にも共有したいと思える。だからこそ、まずは私自身が番組を楽しんでくださっている視聴者の方々に対して真摯に言葉を尽くして向き合い続けたいです。 何をもって優しさの起点になれるかはわからないのですが、みなさんの心を温められる人でありたいですし、みなさんが「今日は人に優しくしてみようかな」と思える日が増えたらいいな、少しでも幸せと思える時間が増えたらいいなと、そう思っています。 ――羊宮さんの中で“優しさ=カッコよさ”でもあるのですね。ちなみに「優しさを共有したい」と思うようになったきっかけはありますか? そうしたポジティブな願いは、ネガティブなものを受け取った結果から生まれるものだと思っていて。 羊宮:まさしく、そうですね。私がそう思うようになったきっかけは外部からの影響ではあったのですが、悲しみに打ちひしがれてもなお「優しい人でありたい」と思えたのは、こんな思いをほかの人にはしてほしくない、苦しい気持ちで毎日を過ごしてほしくないという願いからで。 人から理不尽なことをされてしまい、それが当たり前になると、いつの間にか「自分もされたことがあるから、してもいいよね」と思ってしまうこともあるかもしれない。とくに今はSNSがある以上、心がチクチクと痛むような言葉が消えることはないと思いますが、だからといって、私たちが同じような言葉を使っていいわけではないですし、たとえ辛い言葉を投げかけられたとしても、その人にも理由があって、大切なものを守るために負の感情が生まれてしまったのだと受けとめたい。 私なりにではありますが、温かみにあふれる世界観を番組のテーマとして発信することで、みなさんに幸せを届けられたらいいなと思いますし、そこで生まれた優しさの連鎖は、私にも幸せとして返ってくるものだと思っています。 ――表現やコミュニケーションを通じて人生を善くするということですね。先ほど「言葉が怖い」とおっしゃっていましたが、それだけこだわりを持って紡いでいるのかなとも思いました。 羊宮:それこそ、SNSからたくさんのことを学びましたね。いつも投稿をするために言葉を一つ一つ検索して確認するんです。たとえば、今の私の心情は「温かい想い」なのか「熱い想い」なのか、とか。 ――より適切なのはどちらの表現だろう……みたいな(笑)。 羊宮:そうなんです(笑)。やはり人によって言葉の感じ方は千差万別なので、文法的なことも含め、その見え方はすごく調べるようになりました。 ――そうした語彙はキャラクターを演じる際にも役立ちますからね。ちなみに役者としての理想像はありますか? 羊宮:人生の最後まで役者であり続けることが一番の理想です。あとはお芝居以外にも、歌やダンス、作詞や絵本作りなど、さまざまな表現ができる機会があったらいいなとも考えています。 ――では「役者」というよりも、「表現者」というほうがしっくりくる? 羊宮:そうですね、それもしっくりくるのですが、私が今こうして笑顔でいられるのはキャラクターたちのおかげだと思っているんです。 キャラクターたちが評価を受け、そこからありがたいことに役者である私にもスポットが当たり、称賛の声をいただく機会もありましたが、なにより「こんなにも素敵なキャラクターと歩めている私はなんて幸せなんだろう」と心の底から思うんです。 「この子たちを置いて先にはいけない、絶対に生き続けなければ!」という気持ちが、明日を生きる活力であり、私の表現における原動力になっているのだと感じています。 ――生活のとなりにはいつもキャラクターがいて、羊宮さんのことを支えてくれているのですね。最後に『小市民シリーズ』の放送を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。 羊宮:今回お話しさせていただいたように、人それぞれにさまざまな経験や感情を抱え、それが人間像や生き方にも関わってきます。なぜ主人公の小鳩君とゆきちゃんは「小市民」を目指しているのか、そしてこれから始まる物語の中で彼らがどのように感じ、動いていくのかが美しい作画や音楽とともに描かれています。目でも耳でも心でも楽しんでいただける作品となっていますので、ぜひ最後まで放送をお楽しみください。 (取材・文・撮影:吉野庫之介) テレビアニメ『小市民シリーズ』は、7月6日よりテレビ朝日系全国24局ネット「NUMAnimation」枠にて毎週土曜25時30分、7月13日よりBS朝日にて毎週土曜25時放送。ABEMAにて地上波同時・先行配信。