商用車ベースと侮るなかれ! 走りの良さに驚いたフィアット ドブロ マキシ 試乗レポート【前編】
高速走行時の安定感はさすが欧州と思わせる
いよいよ高速道路へと入っていきます。ETCゲートを通過して中~高速域へと移行していくシーンではディーゼルターボエンジンならではの強いトルクと8速ATを駆使してジワジワと加速していく感覚です。流れに乗って巡航し始めるとその直進性はかなり高いと感じました。さらに車線変更時などはハンドル操作に対するクルマの動きの精度が高く、安心して高速クルーズすることができます。 ちなみにドブロ/ドブロ マキシとほかの兄弟車のパワートレーンは共通で、1.5L直4ディーゼルターボエンジン+8速ATのFFとなります。最高出力96kW(130ps)/3750rpm、最大トルク300Nm/1750rpmというエンジンスペックも共通です。またフロント:ストラット、リア:トーションビームというサスペンション形式も変わりません。 タイヤサイズは205/60 R16で、銘柄はグッドイヤー エフィシェントグリップだった。 乗り心地は国産メーカーのミニバンと比べればやや硬めです。ただし、205/60 R16という厚みのあるタイヤがシッカリと衝撃を丸めているので、高速道路の継ぎ目を越えたときに車内に伝わる衝撃はかなりマイルドになっていて、不快感を覚えることはないでしょう。 それどころか足まわりがシッカリとしている、言い換えれば「コシがある」ので、車線変更時やアールが大きなジャンクションのカーブなどを走り抜ける際の車体の傾きや揺れは少なく、これなら同乗者は車酔いしにくいだろうな、と感じました。
大柄なドブロ マキシの峠道でのフットワークはどうか
高速道路を降りて、比較的カーブが緩やかなワインディングロードに入ると、高速走行時に感じたハンドリングの正確さとコシのある足まわりが際立っていると感じます。 道中、路上に落ちている大きな木の枝や停車車両を避けるといった少し急なハンドル操作をするシーンがありましたが、クルマはきちんと応えてくれて、車体は思いどおりの方向に向きを変えます。ハンドルをもとに戻せばスッとクルマが車線の中央に戻り何事もなかったかのように前進していくというその動きは、ミニバンとして見ればとても落ち着いていて安心感を覚えました。 今どきの多くの国産ミニバンも操縦安定性にはかなりこだわっていて、車両の姿勢制御能力はかなり良くなっていますが、それでもドブロ マキシに比べると修正舵を必要とするシーンが多いように感じます。そういう点からもやはりドブロ マキシの走りは安心感が高いと言えます。 一般道で気になったことは、取り回し性能です。最小回転半径は5.8mとちょっと大きめなのでUターンや方向転換の際にはハンドルを切り返す回数が増えるかもしれません。また、ホイールベースはあと25mmで3mに達する長さなので内輪差を気にしたほうがいいシーンもあるかもしれません。 なお、走行中に感じる車内の騒音は速度相応に増しますが、運転席と助手席、または2列目シートの乗員との会話ができないということはありませんでした。先述の静粛性、乗り心地も含めて、ファミリーカーとしての要件は十二分に満たしていると感じた一方で、車内の静かさに関しては国産メーカーの高級ミニバンや電動走行が可能なハイブリッドミニバンの方が一歩先を行っている印象でした。