平手打ちで政治家人生を大きく変えたフランスの新首相、難局打開なるか
対独10年債スプレッドがジリジリ拡大
だが、首相が交代しても政局が依然として波乱含みであることに変わりはない。左派の新人民戦線を構成する政党のうち、最も左寄りとされる「不服従のフランス」は不信任案を提出の構えで、バイル新首相との面会を拒否した。 新人民戦線の構成政党でも社会党や緑の党はいまのところ、不信任案には同調しない姿勢。だが、社会党の幹部からは「バイル氏の存続はわれわれの手にかかっている。これを利用して、できる限りのものを手に入れるつもりだ」との声が上がっていると前出のテレビ局「フランス2」は伝えた。 バルニエ前首相の問責決議案に同調したRNは現時点で不信任には回らない方針。ただ、指導者のマリーヌ・ル・ペン氏は「移民問題と安全保障の解決策の提示といった有権者の期待を首相に表明した」とけん制する。 共和右派も首相支持の構えだが、同党トップのローラン・ウォキエ氏は「首相が提示するプロジェクトを待って、政権参加の可能性を検討する」とツイートした。 バイル氏の就任直後に実施された世論調査は新首相の前途多難を予感させる。フランスの調査会社「BVA Xsight」がラジオ局の「RTL」と12月13日から14日に共同で行った調査によると、1003件の回答のうち、バイル新首相を「良い」と評価したのは40パーセントにとどまった。 2017年にマクロン大統領が誕生して以来、首相の就任直後の支持率としてはもっとも低い水準だ。6月の解散直後に首相を務めたバルニエ氏も政権発足時は52パーセントだった。 同じく、バイル氏がフランスの現在の状況を改善し、政府に新たなダイナミズムをもたらしてくれると信頼するフランス国民も34パーセントにすぎない。 フランスの信用力を測る指標とされる同国10年債利回りのドイツ10年債利回りに対する上乗せ幅、いわゆるスプレッドは6月の欧州議会選挙でのRN躍進などを機に急拡大。 12月上旬には0.88パーセント台の水準まで広がった後、いったんは縮小したが、再びジリジリと拡大している。金融市場にはフランスの政局の混乱長期化に伴う財政リスクの高まりへの警戒がくすぶり続けている。
松崎泰弘