安保法案に見る中央と地方の「ねじれ」の意味 地方議会で相次ぐ反対意見書
安全保障関連法案が衆院を通過、国会論戦の舞台は参院に移ることになりました。野党の反対を振り切って成立を急ぐ安倍政権に対しては、地方議会の自民党系議員ら「身内」からも廃案を求める意見書が出されるなど異論が上がっています。こうした「ねじれ」をどう見たらよいのか、地方の現場や識者の声を聞きました。
「反対」「慎重」が圧倒、保守地盤でも
衆議院議事部によれば、安保法案に対して今国会中に提出された地方議会からの意見書は7月17日現在で356件。その内容は、同議事部では賛否などを分けられないとしますが、7月9日付の朝日新聞、同15日付毎日新聞などが各議会に取材したとする記事と照らし合わせると、廃案や撤回などを訴える「反対」が約4割、慎重な審議や国民的理解などを求める「慎重」が5割超、法案成立を求める「賛成」は1割に満たないようです。 都道府県では、岩手県議会が明確に「廃案」を求める意見書を賛成多数で可決。三重、長野、鳥取の各県議会が「慎重」審議を求める一方、安部首相のおひざ元である山口をはじめ長崎や秋田の各県議会が「賛成」の意見書を可決し、早期成立を求めています。 市町村議会になると、革新系の強い沖縄や長野県下の自治体はもちろんですが、自民党系の多い保守的な地盤でも反対や慎重姿勢が示されています。各議会で定例会が開かれている最中の6月に、憲法学者たちがそろって「違憲」表明をしたのが影響したと見られます。愛知県扶桑(ふそう)町議会は16議員中14議員が保守系の会派所属ですが、憲法学者らの指摘も踏まえ、6月中旬に「憲法の平和主義・立憲主義に反する安全保障法案の制定をしないよう求める意見書」を全会一致で可決しました。 保守系会派代表の町議は「町自体が非核平和宣言をしており、議会としても昨年3月には憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する意見書を出していた。その流れから今回の安保法案も認められないという判断になった。その後の衆院での可決は非常に残念だ」と述べます。また、別の自民党員の町議は「実際は自民党系の中でも意見はさまざま。個人的には法案すべてに反対ではない。ただ、地方として矛盾を感じることは今回の法案に限らずいっぱいある。地方議会としておかしいとアピールしていくことは無意味ではない」と主張しました。