「出生届を出したら飛び降りて死ぬ」…「予期せぬ妊娠」で絶望していた40代女性が「スッピン、部屋着」のまま向かった先
昔の明るさを取り戻す
佐藤さんは、このときの及川信之理事長の言葉に救われたと話す。 「及川さんは私の話を聞き終わると、『あなたは一人じゃないですよ。みんなでこの子を育てましょう』と言いました。私はこれまで、自分ひとりが母親だから、自分が何もかもやらなければいけないと思っていました。元旦那は出産予定日になっても連絡がなく、こちらから養育費について聞いても『支払いません』の一言で実際に一銭も支払わない人です。そうした経済状況を招いて、精神状態もぼろぼろになった私は、母親失格だとどこかで思っていました。 しかし子どもはひとりだけで育てるのではなく、場合によっては他人の力を借りてもいいのだと知って、靄が晴れるような気がしました」 実際、NPO法人らいおんはーとでは、及川理事長の言う通りのことが実践されていたという。 「利用者として通うようになると、こども食堂にきた子どもたちが私の子どもを可愛がってくれたり、遊んでくれたりするんです。子どもにつきっきりにならなくて良いので、及川理事長や他の利用者の保護者とさまざまな話をすることもできるようになりました。通い始めて半年くらいで徐々に話せるようになり、1年くらいで昔の明るさを取り戻せたように感じます」 3年間の利用者兼ボランティアスタッフを経て、佐藤さんは2023年7月より正式にスタッフとして働くことになった。さまざまな家庭をみていくなかで、「母親の孤独」を感じる場面は多いという。 「弊所はシングルマザーに限らず、どんなご家庭であってもご利用いただけます。しっかり育児を担うお父さんもいる一方で、仕事の都合などでほとんど家に居なくて、奥さんが悩みを打ち明けられないケースもみてきました。”いるのにいない”夫との関係性に悩むお母さんは意外と多いことに気づきます。子どもは母親だけのものではないのに、特に日本社会においては、無意識にその責任をすべて母親に押し付けているように感じます」