殺戮マシーンに血を通わせたアーノルド・シュワルツェネッガー!恐怖と感動与える映画「ターミネーター2」
SFアクション映画の金字塔『ターミネーター2』を挙げる人は多いだろう。 1984年に公開された『ターミネーター』の続編であり、ジェームズ・キャメロン監督がメガホンをとった。 【写真を見る】『ターミネーター2』より 大まかなストーリーとしては、来る未来に機械と人類による核戦争が巻き起こるため、機械側が過去にターミネーターのT-1000を送り、後に人類抵抗軍のリーダーとなり当時は子供のジョン・コナー(エドワード・ファーロング)を抹殺しようとする。それを阻止しようと未来のジョンが過去に送り込んだのが旧型ターミネーターであるT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)だった。 戦闘力ではT-1000が上回る中、ジョン・コナーや母サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を守るため、T-800が命をかけて戦う姿が描かれる。『ターミネーター2』最大の魅力はやはりそこにある。 前作にあたる『ターミネーター』では、シュワルツェネッガー演じるT-800はサラ・コナーを抹殺しようとする敵側のターミネーターだった。しかし、翻って今作ではコードが書き換えられ、コナー親子を守る頼もしい仲間へと生まれ変わっている。文字通り身を盾にして2人を守り、ライダースの革ジャンを羽織ってライフルをぶっぱなす姿はシンプルにクールでかっこいい。 だが、ターミネーターを単なる殺戮マシーンと見せないのがこの作品の目を見張るところ。T-800に感情はなく、目的のためには手段を選ばない。しかし、ジョンの命令を聞いて学習していくため、「人を殺さない」という指示を守り続けるなど徐々に人間へと近づいていく様子が見られる。もちろん、銃弾を浴びながら警察と対峙する場面を見ると、「マシーンだった」と事実を突きつけられるのだが、ジョンと2人で会話するシーンはどこか微笑ましい。ジョンに向けた眼差しはどこか温かく、母親であるサラが父親の姿と重ね合わせてしまうのも納得だ。 そんなT-800に対して知らず知らずのうちに愛着を持ってしまうのもシュワルツェネッガーの大きな功績のひとつ。188センチの高身長と、ボディビルダーとして培われた厚い胸板はまるでターミネーターを演じるためにあったような体躯だ。また、サングラスをかけてライフル片手にハーレーを乗り回す姿がこれほど似合う人も他に見当たらない。そんな彼がジョンから学んだスラングを使いながら、敵と激しい戦いを繰り広げるのだから、愛情を持つなと言うほうが無理な話だろう。 一方で、敵としてあまりに魅力的なのがロバート・パトリック演じるT-1000。液体金属で再生能力や変身能力を持つターミネーターには、トラウマのような恐怖を感じた人も少なくないだろう。無表情でしつこく追いかけ続けてくるT-1000はまさしく無敵と呼ぶにふさわしい敵だった。 そんな両者だからこそ、ラストの製鉄所でのバトルは映画史に残るものだと胸を張って言える。液体窒素で一度はT-1000を凍らせたかと思われたが、復活して猛攻を受けT-800は左腕を失ってしまう。さらに動力源を破壊され一時的に機能停止するT-800だったが、補助パワーで活動を再開させ、最後にはグレネードランチャーをもってしてT-1000を溶鉱炉へと撃ち落とすのだった。 クライマックスはT-800とジョンの別れ。T-800は自らのチップを処分するため、溶鉱炉へと向かう。そこではジョンの命令の言うことも聞かず、「あきらめろ」と冷たく突き放す。だが、次の「泣く気持ちがわかった。泣くことはできないがね」という言葉はT-800がいかに人間に近づいたかを如実に示しており、見る側の涙腺を痛いほど刺激してくる。 激闘の後で機械がむき出しになっている姿でありながら、まるで子を想うようなシュワルツェネッガーの優しい表情からはターミネーターにないはずの温かさを感じることができる。親指を立てて溶鉱炉へと沈んでいくシーンはあまりに有名だが、T-800の複雑な心境を表現する俳優シュワルツェネッガーの顔つきもあって、より人々の記憶に残る美しいラストとなっている。 文=まっつ
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