配属ガチャ不安を解消、最初の職場を確約の動き…内定辞退や早期離職を防ぐ狙い
大手企業で、新入社員の最初の配属先を「確約」する動きが広がっている。職種や勤務地がどこになるか分からない「配属ガチャ」への不安を和らげ、内定辞退や早期の離職を防ぐのが狙いだ。ただ、学生側の希望をかなえるには、人事戦略の見直しが必要となるケースもあり、導入に躊躇(ちゅうちょ)する企業も少なくない。(武石将弘) 【図】一目でわかる…主要企業の新卒採用計画、このように推移している
希望の職種を選んで面接
「皆さんの初期配属への思いや挑戦を応援します」。10月1日、東京・新宿の損害保険ジャパン本社で開かれた内定式。集まった約300人の内定者に向け、新たな人事制度が発表された。
同社が導入したのは、新入社員が希望の部署に応募できる「新卒ジョブ・チャレンジ制度」だ。営業や商品開発など約30の職種から希望を選び、書類や面接による選考を通れば、配属先が確約される仕組みだ。
応募しても希望が必ずかなうとは限らないが、人事部採用グループの天利友香さんは「自分の強みやスキルを生かせる制度。内定後に改めて自分のキャリアについて考えるきっかけになれば」と話す。内定式に参加した早稲田大4年生(22)は「望むキャリアを実現できるチャンス。応募してみたい」と活用に前向きだ。
住友商事も2025年入社の新卒採用から、内定時に入社後の配属先を確約する「WILL(意志)選考」を導入した。約30の部署から選んで応募でき、全体の採用数約100人のうち約3割が対象だ。採用担当者は「学生のキャリア観は多様化している。一人ひとりの意思を尊重したい」と話す。
人手不足で売り手市場
新入社員の配属先は入社後、本人の希望や適性を会社が判断して決めるのが一般的だ。しかし、入社前に配属先を確約する枠を設ける動きは各業界に広がる。背景には、企業が内定辞退や早期離職に悩まされている事情がある。
内定を複数得た東京都内の私立大4年の男子学生(22)は迷った末に、都内の中堅IT企業への就職を決めた。第1志望だった大手金融機関にも内定していたが、「全国転勤があり、希望部署に行けるか分からない」と辞退した。「仕事内容が確約され、家族や友人がいる東京で働ける会社を選んだ」という。