第93回選抜高校野球 天理・智弁学園、ナイン躍動 担当記者、熱戦振り返る /奈良
<センバツ2021> ◇夏こそ頂点へ、雪辱誓う 1日に幕を閉じた第93回選抜高校野球大会で、県勢2校が甲子園の舞台で全国の強豪校相手に激闘を繰り広げた。天理は1997年以来24年ぶりの4強入りを果たし、智弁学園は大阪桐蔭との初戦を制して準々決勝まで勝ち進んだ。「夏こそは日本一」と雪辱を誓う両ナインの取材を担当した記者2人が大会を振り返った。【広瀬晃子、林みづき】 ◇捕手の活躍光る 広瀬 天理の試合では、2回戦で達孝太投手が強力打線の健大高崎(群馬)を2安打に抑えた完封劇と、準々決勝の仙台育英(宮城)戦で2-2に追いつかれた後の猛攻が記憶に残っている。ピンチの際にはマウンドに集まり、今年のスローガンの「越」カードを出して励まし合う姿も印象的だった。 林 智弁学園はやはり、「事実上の決勝戦」とも言われた大阪桐蔭との1回戦が忘れがたいです。組み合わせが決まった後、選手たちは「打倒桐蔭」を掲げて臨み、初回に4点を先取した際には思わず興奮しました。先発して8回を投げた西村王雅投手もよく踏ん張りました。敗れた明豊(大分)との準々決勝も後半の猛追が印象に残っています。大会中はどちらも捕手の活躍が目立ちましたね。 広瀬 天理の政所蒼太捕手は好リードに加え、計5打点と攻守でチームに貢献していた。達投手も信頼していて、今大会で「最高のバッテリー」との呼び声も高かった。 林 智弁学園の植垣洸捕手も多彩な投手陣をまとめ上げ、全試合安打で好機を作るなど、8強入りに大きく貢献しました。 広瀬 天理は木下和輔選手も打撃で大活躍だった。昨秋はベンチ入りできなかったけど、今大会は初戦から全試合でスタメン入りし、結果も残した。甲子園での成長ぶりはチーム一だったんじゃないかな。 林 智弁学園は小畠一心投手の成長が目覚ましかった。また下位打線を担う森田空選手、足立風馬選手らがここぞという場面で一本を放つなど、主軸以外の活躍には今後も要注目です。 ◇応援は心の中で 広瀬 新型コロナウイルスの影響でPCR検査(遺伝子検査)後の選手と直接話せないなど、取材も難しい面があった。 林 でもオンライン取材に変更されたことで、試合後に落ち着いて話が聞けるメリットもありました。 広瀬 アルプススタンドでも大声で思い切り応援できず、保護者や生徒らはもどかしそうだった。 林 吹奏楽部も生演奏ができず、録音した音源を流すにとどまりましたが、毎試合に全部員が応援に駆け付け、部員は「心の中で演奏しています」と話していました。 広瀬 チアリーダーたちも声を出さずに明るい笑顔でエールを送り続けていたのが印象的だった。天理の内山陽斗主将は「気分が乗った状態でプレーができた」と応援席に感謝していた。 林 智弁学園の山下陽輔主将も「今回はいつも通りの応援ではなかったが、それでもパワーをもらえた」と話していました。 広瀬 入場制限はあったけど、無観客ではなく観客が見てくれていたことも、選手たちにとっては心強かったんじゃないかな。 ◇高い意識に感銘 林 センバツ選考から2カ月間、よく練習にもお邪魔しましたが、選手たちの野球に対する真摯(しんし)な姿勢に感心させられました。3000本近く素振りをする日もありましたが、量だけでなく、質にこだわった練習を心掛ける意識の高さが際立っていました。 広瀬 天理は選手の自主性を尊重する指導法が印象的で、練習メニューも選手たちで決めている。中村良二監督は「指示通りに動いて勝てても意味が無い」という考えで、試合中もほとんどサインを出さない。「勝ち負けより、試合後にやり切ったと思えるプレーをすることが大事」とも話していたよ。 林 夏に向けて智弁学園は打線のつながりや、3番手、4番手の投手をさらに強化してほしいです。準々決勝では攻守ともに力を出し切れなかった印象があるので。 広瀬 天理は達投手の安定性やスタミナの向上が鍵。投手陣を援護する打線の強化もポイントになる。準決勝の東海大相模(神奈川)戦で初先発ながら8回を1失点で抑えた左腕の仲川一平投手が今後、右腕の達投手と左右の二枚看板としてチームを支えられれば盤石になるね。 林 智弁学園は2年生の中陳六斗選手が今大会の直前にメンバー入りを果たし、7打数3安打と勝負強さを発揮しました。3年生に続いてチームをけん引する存在になるのではと期待しています。 ……………………………………………………………………………………………………… 〇…対戦記録…〇 ▽1回戦 天理 7―1 宮崎商 智弁学園 8―6 大阪桐蔭 ▽2回戦 天理 4―0 健大高崎 智弁学園 5―2 広島新庄 ▽準々決勝 天理 10―3 仙台育英 智弁学園 4―6 明豊 ▽準決勝 天理 0―2 東海大相模